「ドキュメント72時間」年末スペシャル20242025-01-01

2025年1月1日 當山日出夫

ドキュメント72時間 年末スペシャル2024視聴者投票

ここ数年、「ドキュメント72時間」は見ている。録画しておいて、二~三日後にゆっくりと見ることがほとんどである。年末には、その年のベストテンが放送なので、これも見ている。

二〇二四の年末スペシャルも、これは、家で留守番と孫の子守をしながら見た。だいたい予想したのは、ランクインしていたという感じだったのだが、予想外だったのが一位である。「国道4号線 ドライブインは眠らない」だった。これも見たことは憶えているのだが、そう強い印象に残る回ではなかった。特に、劇的な人生をあゆんだ人が出てきていたわけではないし、めったに見られないようなことが映っていたということでもない。ごく普通のドライブインと、そこにくるお客さんの話しであった。

だが、これが一位になったというのは、何か象徴的な気がするので、書いてみることにした。

この「ドキュメント72時間」という番組の企画からどうしてもそうなるのだが、ある場所や施設にまつわる人が多く登場することになる。その地域のローカルな人びとの交流が描かれることが多い。たぶん、このことが、この番組が長く続いている理由であり、また、今回の一位がドライブインであった理由なのだろう。

その地域に住む人びとの普段の生活と交流。これこそが、今の日本において、急速に失われつつあることである。そのなかには、家族のつながりもふくまれる。

現在の先端的な(?)価値観からすると、家族とか結婚とかいうものは、個人の自由意志や価値を束縛するものであり、そのようなもの縛られるのは、前近代的な封建制の残滓である……このような発想になる。このように考えることになったのには、それなりの理由があってのことではある。都市部における核家族化の進行の最終的な姿といってもいいかもしれない。個人の自由な意志が尊重されるようになったこと、それ自体は好ましいことだというべきである。これを否定しようとは思わない。

だが、それで何を失うことになるのか、なくなっていくものへの郷愁というべき感情を、人びとがいだくようになっても、おかしくはない。これは、人間のならいというべきもので、別に反動的保守思想として非難されるべきことではないと、私は考えている。時代がかわり、生活様式が変わっていくなかで、自然にいだく気持ちととらえておくべきだろう。

ドライブインの回であるが、登場していたのは、トラックドライバー、地元の消防団、家族、友達……ということになるだろうか。特別に感動的な話しがあったということではない。(強いていえば、母子家庭の母親と娘のエピソードだろうが、こういう言い方は失礼になるかもしれないが、これも、今の時代において、特に珍しいということではない。)

地元の消防団の付き合いなど、今の日本では絶滅危惧といっていいことであるが、一昔前までは普通にあったことである。家族で子どもを連れてやってきて、自分が子どものときに親に連れられてきたときのことを思い出す、これも今では、こんな親子関係は貴重かもしれない。自衛官になって休暇で帰ってきて、両親と食事に行くというのも、当たり前のことのようだが、孤独な都会生活からみると、ほのぼのとしたものを感じるところがあるにちがいない。

一昔前までは、ごく普通に日本中にどこでもあったような人と人との関係、家族の関係が、近年になって劇的に変化してきている。そのなかにあって、ちょっと前まではこんなだったなあ、と懐かしく思い出すのも、また人情というものであろう。

これは、いいとか悪いとかの問題ではなく、社会が変化していっているなかで、人びとが感じていることである、としかいいようがない。年末にテレビを見ながら、今の日本はこういう時代になっているのだなあ、としみじみと感じたということなのである。

感動を見る人に押しつけるところがない。何を感じるかは見る側の想像力にまかされている。これが、この番組の一番いいところであるにちがいない。

2024年12月31日記

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