『カムカムエヴリバディ』「1983」「1983ー1984」2025-03-16

2025年3月16日 當山日出夫

『カムカムエヴリバディ』「1983」「1983ー1984」

高校生の夏休み、ひなたは虚無蔵のさそいをうけて、映画村でアルバイトをすることになる。そこで、映画村で働くひとたち、また、映画の撮影現場を目にすることになる。結局、高校を卒業して、映画村に就職して働くことになる。

『カムカムエヴリバディ』のひなた編、特に、映画村の部分をみると、先に再放送のあった『オードリー』へのリスペクトを、いたるところに感じる。1980年代、映画産業、なかでも、時代劇が衰退の方向にむかいつつあったころ、映画にたずさわる人びと……俳優、それもスターばかりではなく、大部屋の役者たちをふくめてであり、撮影の裏方のさまざまな仕事であり、また、事務的な仕事をするスタッフなど……いろんな人たちの協力があって、映画が出来ているのだが、その人たちの、それぞれの思いが、重層的に、そして、細やかに描かれていたと感じる。衰退していく業界であることを身をもって感じているからこそ、仕事への思いはひとしおである。

やはり興味深かったのは、映画の撮影シーン。映画を撮っているところを、映像として撮るということは、これまでも多くの作品でこころみられてきているところである。映画にたずさわる人びとをテーマにした映画もある。このドラマの場合、時代劇の撮影中に、ひなたと文四郎が飛び入りで加わって、撮影現場のなかで、時代劇とはなんであるか、見る人は何を楽しみみているのか……丁々発止でやりあうのは、斬新であると同時に、まさにこの時代のテレビ時代劇の本質にかかわる議論でもあった。斬新と言われた「木枯し紋次郎」であっても、「必殺」シリーズであっても、大局的には、一種の紋切り型の作りであったことは、たしかである。「水戸黄門」や「遠山の金さん」などは、徹底的にパターン化してあった。無論、これは、意図的にそうつくってあった。

美咲すみれ(安達祐実)がいい。下手な女優の役を、見事に演じている。それから、再放送で気づいたが、一恵の役が、三浦透子である。私は、いい女優さんだと思って見ている。

『オードリー』で晋八のうどん屋が出てきていたが、『カムカムエヴリバディ』では蕎麦屋になっている。そこで、気炎をあげる美咲すみれが語る、モモケンと虚無蔵の過去のこと。そして、それに重なるように、隣のテーブルにいた吉右衛門一家が話す、岡山での思い出。それは、実は、ひなたの母のるいと、祖母の安子の、過去にかかわる話しになる。ドラマを見ている人間には、あのシーンとして思い出すことになるが、しかし、このドラマのなかのひなたにとっては、知らない昔話である。ひなたは、自分の家族の過去のことについて、まだ知らないでいる。

虚無蔵がいい。大部屋俳優であるが、木刀をもっての立ち居振る舞いは、さすがである。そう演出してあるのだが、文四郎と比べると、歩き方、木刀の持ち方からして、レベルが違うことが分かる。

この週は、虚無蔵が映画のオーディションを受けると言ったところで終わっていた。結果は、先に見て知っているのだが、しかし、そう決意する虚無蔵の表情には迫力があった。

2025年3月14日記

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