BSスペシャル「若者の選択〜SNSと韓国大統領選挙〜」2025-06-17

2025年6月17日 當山日出夫

BSスペシャル 若者の選択〜SNSと韓国大統領選挙〜

自分が何を選択するか、どのような意見を持つかということは大切なことであるが、しかし、同時に、自分は必ずしも正しい判断をしているとはかぎらないのかもしれない、また、反対の立場の人についても、それはかならずしも間違ってはいないのかもしれない、その上で、現在の状況としては、自分はこのような判断をすることになる……ということが、議会制民主主義の基本に必要なことである、というのは、経験的にいっていいことだと思っている。どんなに「正しい」ことであっても、それが教条化しては、逆に、悪となってしまう。これは、歴史のしめすところである。

しかし、このようなことを言ったとしても、現代の韓国では、(また、日本でも、アメリカでも、あるいはヨーロッパ諸国でも)、まったく説得力を持たなくなっているということかと思う。

私は、YouTubeは基本的に見ない。少なくともニュースの情報源としては、信用していない。新聞は、学生のときからだから半世紀になるが、朝日新聞をずっと読んでいる。(その主張に賛成というよりは、小規模の学術出版の多くは新聞に広告を出すとき朝日新聞にしか出さないということがあるから、というのが大きな理由であるが。)現在では、ネット版の記事は、朝日・毎日・読売・日経・産経、とひととおり見ることにしている。ほとんどが有料記事ばかりになってしまっているが、無料で見られる範囲でもだいたいの論調はつかめる。

自分の意見はあるとして、それと異なる意見に触れるためには、経済的にも、時間的にも、精神的にも、コストがかかる。

SNSに耽溺してしまうのは、精神的なコストは低減できるかもしれないが、逆に、時間的なコストは高くなる。番組に出てきたように、一日に何時間もスマーフォンでYouTubeを見ているというのは、決して例外的な事例ではないだろう。特に、失業中の若者であったり(それが、この番組の焦点のひとつだったが)、リタイアした老人だったりすれば、一日中見ていたりすることもあるかと思う。

SNS情報があぶない、ファクトチェックが必要である、ということでは不十分である。それよりも、世の中には多様な意見があるのであり、そのなかには、嫌悪したくなるようなものもあるかもしれないが、しかし、そのように考える人がいるということを事実としてふまえ、なぜ、そのように思う人がいるのか、理由を考える、決して陰謀論にはまっているからというような定型的な判断をしない、さらにその背景にあることを考えてみる……とても面倒なことではあるが、こういうことを、教育(学校教育、社会教育)のなかで積み重ねていくしかないのかと思う。民主主義というのは、異なる意見をどう妥協させて、よりより方向に向かっていくにはどうするか、ということなのである。どんなに「正しい」とされることであっても、独裁的、教条的であってはならない。

しかし、もう、そんな悠長なことを言っていられる状況ではないかとも思うが。

日本でも、ネットのコンテンツについて、それは「ヘイト」である、「エロ」である、と規制を求める声がある。しかし、権力による言論統制は、エログロナンセンスからはじまる、という歴史を忘れるべきではない。

番組を見ていて、ちょっと気になったことがある。始めの方でさらりと出てきたことなのだが、今の韓国では、軍人や兵士が正当に報われていないと感じるようになってきているらしい。これは、社会として、国家として、非常に危険な状態になりつつあるといっていいのではないか。右派政権であれ、左派政権であれ、軍をしかるべくコントロールすることが、絶対に必要である。

それから、私が不思議でならないことの一つに、韓国でまずおこなうべきは、大統領権限の見直し……非常戒厳ということが出来るのがいいのか、また、弾劾の手続きの妥当性など、このようなことの国民的な議論だと思うのだが、どうもそういう方向には向かわないようである。今度の政権をとった、いわゆる革新系の人たちは、自分たちは絶対に間違ったことはしない、あるいは、場合によっては前政権のように非常戒厳ということも可能ということを手放したくない、ということなのだろうか。

2025年6月15日記

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