新日本風土記「京都 家々」2026-05-02

2026年5月2日 當山日出夫

新日本風土記「京都 家々」

映っていなかったのが、京都の街中にあふれる外国人観光客。番組の中ででてきたような、静かな京都は、今ではかなり意図的に探さないと無理だろうな、と見ながら思ったことである。

見ていて一番興味深かったのは、始めのところで出てきた、弓の職人さん。道具の小刀(切り出し)を、専門の刀鍛冶の職人さんに作ってもらっている。実用的な道具、刃物を作る、それを使って実際にものを作る、この場合は弓であるが、こういう職人さんの仕事のつながりというのは、とても大事なことだと思う。

私の子どものころまでは、切り出し小刀などは、日常的に身の回りにあったものだが、今では、姿を消してしまったものになるだろうか。まったく売っていないということではないが。

鉛筆を削るのには、切り出しか、肥後守か、というのが、私の感じているところである。しかし、このごろでは、簡単に電動の鉛筆削り機を使ってしまうことが多いが。

京町家というのは、なくなっていくだろうと思う。京都の街で、京町家という家が意味があったのは、その時代(江戸時代の中期以降)の京都の気候風土であり、生活様式であり、その街の社会的秩序であり、商売のあり方であり、ということが、総合的にあってのことである。現代のように、歩いて行けるところの買物で、日常生活が送れるということが崩壊している、少なくとも崩壊しつつある、という状況では、京町家を残すのは難しいにちがいない。まさに文化財として残すだけのことになる。

だが、昔の、自分が生まれる前の家を修理して、それを、さらに自分が死んだ後の大工さんが修理するだろう、こういう時間の感覚の中で仕事をすることには、たしかに意義がある。

昔の京都の街だったら、歩いていけるところにお豆腐屋さんがあるか、あるいは、ラッパを鳴らしながら売って歩いたものである。それが、スーパーで、パック詰めのお豆腐を買うようになれば、すたれていくのはいたしかたない。

お豆腐屋さんでは、かまど、おくどさん、で豆を煮ている。気になったのは、火をつけるとき、バーナーで着火していた。これも、昔だったら、新聞紙に火をつけて、それで細く割った薪に火をつけて、さらに、太い薪を燃やして、となるはずだが、もうそんな悠長なことはしてないようである。

江戸時代、京都の街の周囲の山は、木が切られて、ほとんどハゲ山状態だったということだったと思うが、今では、歴史としてどう考えられているのだろうか。京都の街の人びとの日常生活のための薪は、どこで生産されて、どのように京都の街の中で売られていたのだろうか。生産、販売、流通、ということの研究はどれぐらいあるのだろうか。まあ、歴史的な風俗として、大原女ということは残っているが。

朝ドラの『カムカムエヴリバディ』に出てきたような商店街は、もう今の京都では、ほとんどないかもしれない。一部には残っているかとは思うが。家からの徒歩圏で、日常の買物が出来なくなったら人は住まなくなる。これは、当たり前のことである。

京都の近代建築は、いろいろあるし、これはこれでとても面白いテーマである。京都文化博物館、これは昔は、平安博物館だったが、もう、そのころのことを覚えている人も少なくなっただろう。この三条の通りには、近代の京都の重要な建築がいくつかある。

妙光寺は、いろんな事情があって荒れはてていたのを、近年になって再興したことになる。

木屋町は、カジュアルな飲み屋街という雰囲気である。といって、ここ数年は行っていないが。京都で学会とかがあれば、懇親会の後の二次会で、ときどき行くことがあったが、もう学会に出ることもない。このあたりは、地元の店どうしのつながりのある地域かなと思っている。

京都に行くとしても、外国人観光客のいない、昔の風情の残っているところを探してということになるだろうか。これはこれで、偏見かなと思わないでもないが。もう、こういうことも面倒になってきたので、まったく足が向かなくなってしまっている。

河原町あたりで、映画を見たり、本屋さんに行って、喫茶店でコーヒーを飲んで、京阪で家に帰る……もう、昔の思い出である。

2026年4月30日記

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