NHKスペシャル「よみがえる法隆寺の至宝 〜金堂壁画・完全復元に挑む〜」2026-09-03

2026年9月3日 當山日出夫

NHKスペシャル「よみがえる法隆寺の至宝 〜金堂壁画・完全復元に挑む〜」

これはよく作ってあった。面白かった。

作った人間の見識がきちんとしている。

文化財の保護の歴史という観点。
仏教美術史における法隆寺金堂壁画の位置づけ。
デジタル技術で、復原することの意味。
その技術的な解説。

それぞれがバランス良く組み合わさっていて、総合的にうまくまとめてある。

部分的には、いくぶん気になるところがないではない。色彩学の観点から見ると、ちょっと気になることがある。

そもそものガラス乾板の感光度分布。どの波長の光にどのように反応するのか、これが一番のスタートに来なければならないのだが、スルーしてあった。一般に波長の短い光に反応するほど、解像度が高くなる……写真のフィルムについては、こうなるのだが、ガラス乾板についても、同様のことがいえるのか。また、ガラス乾板は、可視光領域の光だけに反応するのか、どうであるのか。

ディスプレイで見ることでの、デジタル画像であるから、RGBに分解することになるのだが、このとき、色空間の設定(sRGBでいいのか、AdobeRGBに拡張するのか、これも厳密にはさらにややこしいが)ということがある。

何億画素の解像度ということよりも、上記のようなことが、技術的、色彩学的には、おおきな問題としてあるはずなのだが、ちょっと専門的になりすぎるということで、カットしてあった。だが、映っている作業の場面など見ると、考えて作業していることは、理解できる。

ただ、画像データを見るときに、ノートPCでMacとWindowsを同じように使っていいかというのは、ちょっと気になったところである。

こういうことの技術にかかわる会社としては、富士フイルムと便利堂ということになるのは、文化財については、普通のことだろう。

撮影のときの光源については、どんなものであったかは、分かったらしい。これは、非常に重要な情報である。だが、撮影につかったガラス乾板とフィルタについては、説明があったのだが、使ったレンズについては、何も言っていなかった。色収差が問題になるはずだが。

総画素数がいくら(何億か)というのは、たしかに意味のあることであるけれど、それ以上に重要なことは、1ピクセルあたりの情報量(ビット数)である。また、画像データの保存形式のこともある。このことについては、何にも言っていなかったが、きちんと考えてのことだろう。(こういうことは、直接語らなくても、番組全体の作り方から、なんとなく感じとれる。)

デジタル画像のことだけではなく、壁画に使用された絵の具の特定があって、それが経年劣化をしていたことをふまえて、色を決めていくというのは、文化財の復原においては、基本的なステップになることであるはずだが、こういう基礎作業があってのことであることを、きちんと取り入れて作ってあったというのは、文化財の保護や復原についての、見識があってのことである。

画像や色彩のこと以外でも、金堂の古い木材が映っていたが、古い時代のものは、ちょうな、で製材したことがはっきりわかる映像になっている。

最後に文化庁のことばとして、文化財のデジタル画像が、インターネットで簡単に見られる時代になってきている時代だからこそ、その質が重要になってくる……これは、そのとおりだと思う。

番組の趣旨からははずれるが、インターネット上の画像デジタルアーカイブとしていろんな文化財の画像データが見られるようになっているが、絵画などついて、コダックのカラーチャートが写しこんであるのがとても多い。これは、どうにかならないものかと思う。(このことについて論じ出すときりがないことになるけれど。この番組の中では、コダックのカラーチャートはまったく登場してきていない。これも見識である。)

2026年9月1日記

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