ワープロ時代の校正と文書作成2008-01-15

2008/01/15 當山日出夫

ワープロで原稿を書く時代、である。論文によっては、カメラレディ、つまり、プリントアウトしたそのままが、論文誌に掲載される。このような時代にあっては、単に、「文章の書き方」を教えるという範囲を超えて、「文書の作成」という視点から、考える必要がある。

この意味では、校正記号についても、再考してみなければならないだろう。しかし、一般に出回っている、「校正」についてのマニュアル的な本は、依然として、紙の本を印刷する……印刷・出版業界を相手にしている、あるいは、その慣習をひきずっているように思える。

たとえば、ワープロ文書であれば、字(活字)が、横になるなどのことは、原則的にあり得ない。実際に問題になるのは、フォントの指定・サイズなどである。

また、誤字(誤変換)については、旧来の校正の考え方では、間違っている字だけに、訂正を加える。活字(鉛活字)は貴重であり、いちど植字した字は、原則的に生かす、ということが根底にあった。

「保証」を「保障」と間違えていた場合であれば、「証」→「障」、の訂正になる。

しかし、ワープロで仮名漢字変換で文字(漢字)を入力している状況では、漢字一字よりも、熟語単位で、訂正を指示した方がわかりやすいし、合理的である。

上記の例であれば、「保証」→「保障」、とまとめて、訂正するようにする。この方が、わかりやすい、というよりも、実際のキーボードからの操作に適合している。この場合、「保」の字は共通するが、ワープロでの文書作成においては、わざわざ、昔の活版印刷のように「文選(ぶんせん)」からやりなおす必要はない。「障」の字だけを、単漢字でだすよりも、「ほしょう」から変換する方が、はるかに楽であるし、確実である。

実は、私自身、上記の文章を書くときに、そのように、つまり、熟語単位で文字を出す(余計な字は削除する)という方式によって、書いている。でなけば、「しょう」の読み方から、「障」を変換候補のなかから探し出すのは、かえって面倒であるし、さらなる誤変換・誤字を、生み出しかねない。

プロの印刷業においては、また、違った考え方があるだろう。

だが、個人レベルので、ワープロによる原稿執筆や、カメラレディ原稿の作成においては、新しい時代に即した、「校正」のやり方があってよいように思う。

「校正」もまた、文章を書く、あるいは、文書作成の技術の一部である……という認識で、この項を書いてみた。

當山日出夫(とうやまひでお)