ARG305(その2)2008-01-20

2008/01/20 當山日出夫

ARGの305号で紹介されたなかで、興味深かった、あるいは、重要だと思ったのは、

大阪アーカイブズ

http://d.hatena.ne.jp/arg/20080105/1199513230

http://www.osaka-archives.com/

これは、大阪府商工労働部産業労働企画室バイオ・成長産業振興課/新分野・科学情報グループ、によるものであるが、運営主体のことよりも、重要なのは、「アーカイブ」ということについての考え方。このHPを見ると、次のようにある。

「大阪府文化遺産デジタルアーカイブ事業」とは、として、


大阪では、二千年を超える悠久の歴史の中でさまざまな文化が培われ、貴重な文化資産が数多く残されています。しかし、こうした文化財の劣化・変質への対応や、都市開発に伴う現状記録の必要性、さらには災害などによる消失への備えなど、文化資産を後世に残していくための取組みが求められています。

「大阪府文化資産デジタルアーカイブ事業」では、文化資産を超高精細のデジタル画像データとして保存することにより、府民共有の貴重な文化資産を後世に残すとともに、国内外の研究者に向けた学術資料の公開、さらには大阪の文化についての理解を深める情報発信源となることを目指す取組みです。 また、超高精細画像を広く市場で二次利活用していただくことによる収入によって、さらなるデジタルアーカイブの促進を図ることとしています。


この記述のポイントは、デジタルアーカイブの目的について、

1.現状の保存(劣化や消失への対応)

2.研究者への学術資料の公開

としている点にある。また、ARGでも言及してあるごとく、「二次利用」を想定していること。この二次利用が、具体的にどのように運営されていくのかは未知である。しかし、デジタルアーカイブは、二次利用されるものであることを、その構築の意図のなかにふくんでいること、そして、それを明言していることは重要である。

二次利用を許さない規定のデジタルアーカイブもある。端的にいえば、ブラウザで見る以上のことを禁ずる、という趣旨のものである。これでは、いったいなんのためのデジタルアーカイブだか、その役割をはたさない。

もちろん、デジタルアーカイブについて、一定の利用のルールは必要であると、私は考える。少なくとも、学術資料として公開しているものは、アカデミックな利用目的に限って、制限はゆるやかであるべきであろう。

ただ、大阪アーカイブズについては、今後、どのようになるかは別にして、「デジタルアーカイブ」を構築することの目的・理念を、明確にしている、この意味で、注目に値すると考える。

當山日出夫(とうやまひでお)