国立国語研究所のこと(1)2008-02-15

2008/02/15 當山日出夫

この問題、あえて触れずにそっとしておいた方が賢明であるのかもしれないが、日本語学(国語学)にかかわる者として、また、文字研究にたずさわる者として、みすごせないので、書く。また、これは、デジタル・アーカイブや、デジタル・ヒューマニティーズ(人文情報学)のゆくえとも、深く関連すると判断するので、書く。

まず、国立国語研究所は「廃止」ではなく大学共同利用機関への「移管」であること。したがって、組織全体としては、基本的に残る。だが、その移管にあたって、次のような条件がついている。

http://www.gyoukaku.go.jp/siryou/tokusyu/h191224/index_dokuhou.html

【日本語コーパス事業】

○民間事業者等との共同事業とすることについて平成20年度中に検討し、結論を得る。

【病院の言葉を分かりやすくするプロジェクト】

○平成20年度中に廃止する。

【外来語言い換え提案事業】

○平成20年度中に廃止する。

【日本語教育事業】

○他の公的日本語教育機関との役割見直し等を行い、事業の廃止を含め平成20年度中に検討し、結論を得る。

【漢字情報データベース事業】

○平成20年度中に廃止する。

【図書館事業】

○平成20年度中に廃止する。

このなかで見過ごせないのは、「コーパス」「漢字情報データベース」「図書館事業」についてである。

国語研のコーパス計画は、狭義の日本語学研究のみならず、情報処理の分野(言語処理)においても、きわめて注目されている。世界的レベルの水準にある事業であるといってよい。

漢字情報データベース、これを無くすとなると、今後の日本の言語政策はどうなるのか。たしかに、日本の言語政策それ自体をめぐっては様々に議論のあることろである。しかし、「新・常用漢字」が議論されようとしている現時点において、日本における漢字研究の中心的機関が必要であることは確かである。

図書館事業、インターネットによる蔵書検索が普及した現在、『国語年鑑』など不必要との見解もありうる。だが、だが、そのような時代であるからこそ、ある分野の図書・資料を、一箇所にまとめて保管し閲覧できる場所が必要である。これは、日本語学だけの問題に限らず、他の研究分野に影響がおよぶ。

さて、ここまで記した上で、さらに次のことを確認しておかねばならない。国立国語研究所の廃止問題について、インターネット上で、どのような言説があるか。

私の知る範囲で、この問題に積極的に発言しているのは、ひつじ書房の松本功さんだけ、である。また、このことに言及して支援しているのは、笠間書院だけ、である。

茗荷バレーで働く社長の日記

http://d.hatena.ne.jp/myougadani/20080215

笠間書院

http://kasamashoin.jp/2008/01/post_346.html

その他、いくつかブログでの発言は検索にひっかかるが、評するに値しない。

とりあえず、ここまでとする。つづきは、また。

當山日出夫(とうやまひでお)

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