新常用漢字:新聞をスキャンする2008-05-15

2008/05/15 當山日出夫

今週末の日本語学会で家を留守にする。そのため、来週の分の授業の用意(レジュメ・パワポ)を準備しなければならないのであるが、その前に、朝日新聞の記事をスキャナで画像データとしてとっておく。400dpi。

新聞の記事を、眼鏡をはずして見る……などということをするよりも、ディスプレイに大きく表示して見た方が、はっきりと見える。

それにしても、新聞で報じられている内容は、「案」としてみても、お粗末にすぎる。なぜ、これが、発表されたのか、まずは、そこが問題であろう。

小形さんの「もじのなまえ」でも、すでに議論は始まっている。

http://d.hatena.ne.jp/ogwata/20080514/p1

「靴」は、すでに常用漢字に入っている。(これは、安岡さんが指摘。)

「闇」は、0213:2004(新しいVistaで実装)において、統合されている。『増補改訂 JIS漢字字典』による。つまり、「闇」を分離しようとすれば、JISを改訂して文字を増やすことになる。

というよりも、文字を調査・サンプリングするとき、字体・字形の認定について、なにがしかの基準を設定しておかなければならないのは、文字研究の常識。その基準の妥当性についての是非の議論はあるにしても。

なぜ、「闇」においてのみ「音」の「字形の差/デザインの差」で分離するのか。今回の「案」にもふくまれている「菩」には、このような「字形の差/デザインの差」は、無い、のであろうか。

このような「案」ともいえなよいようなものを「案」として社会に出してしまった意図はいったい何なのであろうか。その内容よりも、むしろ、その意図の方が気にかかる。

さらにいえば、2010年をめどというのは、最悪のタイミングになる。旧XPの0208、新VISTAの0213(04)が、社会で、混在している。その環境で見える字が変わるもの、例えば「葛」を出してくるのは、議論が議論にならない。文字を論ずるときの基盤が安定していない。

私などであれば、両方のマシンを用意してあるし、なぜ、字が変わって見えるのか、理解できる。だが、それを、十分に理解していない一般の人に、新聞のHPなどで、文字を一覧して見えるようにしても、余計な、混乱をまねくだけである。

まあ、ともあれ、スキャンした画像データは、レッツノートにいれて、日本語学会に持っていくことにする。

當山日出夫(とうやまひでお)