新常用漢字:漢字だけを見ても漢字はわからない2008-06-21

2008/06/21 當山日出夫

昨日、私が書いたことに、さっそく小形さんから、コメントをつけていただいている。感謝。

また、 INTERNER Watch において、今回の(新)常用漢字表の、もとになったデータが示されている。

もじのなまえ

http://d.hatena.ne.jp/ogwata/20080619/p1

INTERNET Watch (第2回) 審議に使われた多くの頻度調査

http://internet.watch.impress.co.jp/cda/jouyou/2008/06/20/20005.html

ここでさらに、言語研究の立場からいえば、次のような疑問がある。端的にいえば、漢字だけを見ていても、漢字については、わからない、ということである。

(1)まず、ある「語」が、その資料(この場合は文字による文献資料など)にあるか、無いか。使用例が無いということは、非常に重要な情報である。

(2)使用されていた場合、どのように表記されているか。「仮名」(ひらがなで書くか、カタカナで書くか)、「漢字」で書くか。「くま」「クマ」「熊」、いずれで書いているか。

(3)「漢字」で書くとき、全部漢字か、いわゆる「まぜ書き」(語い=語彙、など)か。

(4)また、その「漢字」は、どのような漢字か。例えば、「障害」と書くか「障碍」と書くか。

(5)いわゆる新旧字体の違いがあるもの、また、拡張新字体があるものでは、どの字体を採用しているか。例えば、「區」か「区」か。また、「鴎」を使うか。

(6)これらを総合して、頻度数とか、使用例とかについて、やっと議論できる。

では、委員会の資料は、上記のような判断ができるように、整備されているのであろうか。

それから、INTERNET Watch (第2回)で指摘の、いわゆる「旧字体」「拡張新字体」の問題、これは、どのように「包摂」してあつかうか、あるいは、「分離」してあつかうのか、これは、調査資料の性質によって、まず、基本方針を決めなければならない。

少なくとも、「第一次資料(といえるならであるが)」で、「闇」「靴」などを見ると、この基本のところがおろそかになっていたとしか思えない。つまり、データ全体の信頼性が、問われることになる。これは、本当に、最終段階で整理するときの単なる「ミス」なのであろうか。

當山日出夫(とうやまひでお)

JADS(5)2008-06-21

2008/06/21 當山日出夫

新常用漢字のことについて考えている間に、JADSから遠ざかってしまっていた。

アート・ドキュメンテーション学会「シンポジウム:物語るアート・ドキュメンテーション」の次は、

3次元モデルを用いた伝統舞踊アーカイブ

片山美和さん(NHK)

立命館で行っているのは、光学式モーションキャプチャによる、人間の身体動作の計測・記録、である。これに対して、片山さんの発表は、NHKとATRで、共同研究している、カメラ画像(40台)を使って、人間の動きをとらえようとするもの。

光学式モーションキャプチャと比較すると、それぞれに利点・欠点がある。

光学式では、人間の身体動作の骨格が記録できる。測定するとき、専用の衣装を身につけ、センサーを、体の各所につけなければならない。したがって、衣装(能であれ日本舞踊であれ)は、後から、画像処理で付加しないといけない。人間の身体動作を正確に記録できるが、最終的な実演場面をCG再現するとなると、やや問題がある。

一方、カメラ画像によった場合、きわめて自然に、衣装の動きをふくめて、実演しているそのままを、記録できる。だが、それは衣装を含めた外観によってであり、人間の身体の動作そのものは、わからない。(衣装なしで踊っている姿を記録すれば可能であろうが、それでは、衣装をふくめた自然な動きという利点が無くなる。)

これまで、私が接してきたのは、主に、立命館などの、光学式モーションキャプチャによるもの。この意味で、この発表は新鮮であり、面白かった。

また、この発表で、「これはいい!」と思ったのが、Wiiリモコンで、操作できること。これは、今後の、各種のコンピュータ利用で参考にすべきかもしれない。キーボードでもなく、マウスでもなく、Wiiリモコンという新しい、ユーザインタフェースの活用が、ひょっとすると、人文学におけるコンピュータ利用の新しい方向をひらくかもしれない。

それから、問題・課題かと思ったのは、これは、伝統芸能の「記録」であるのか、あるいは、映像表現としての「見せ方」であるのか、である。NHKの仕事であるから、両方が関係している(あるいは、明確に区分して意識していない)かとも、思った次第である。

當山日出夫(とうやまひでお)