『蝉しぐれ』2008-09-03

2008/09/03 當山日出夫

むか~し、出た時(文庫本)に買っておいて、そのまま、廊下の本棚におきっぱなしであった本。藤沢周平にはファンが多い。その代表作のひとつ。ということは知っていても、なんとなく手をだしそびれて今にいたっていた。

ま、この本のタイトルの「蝉」の字をどう書くか、というのも問題なのであるが、そのようなことはさておき、簡単な印象をいささか。(このブログの文章では、0208の範囲内で書いている。)

ここしばらく、文字とか表記とかについて考えている。そうした視点が頭のかたすみにあるせいか、藤沢周平の文章の読みやすさに、改めて気づく。

読みにくい、わかりにくい文章というのは、そのことで、印象に残るものであるが、逆に、わかりやすい文章は、すらっと読めてしまうので、その「わかりやすさ」が記憶に残らない。

『蝉しぐれ』の読みやすさには、いろんな理由はある。そのすべてを分析しきれるわけではない。しかし、表記の視点からみると、漢字と仮名のバランスが非常によい。誤読しかねない、漢字連続、あるいは、仮名連続が、無い。

現代日本語における漢字の機能の一つに、文章において、いわゆる「文節」の切れ目を示す機能がある。しかし、それが、漢字の連続になって、「どこで区切って読めばよいのかわからない」ということが、えてして起こる。仮名についても、同様。

『蝉しぐれ』の文章は、そこのあたりを、絶妙に回避している。読みながら、眼が、後戻りして文字列を確認する、ということが無い。この作品の文章は、見事であると思う。現代における、漢字仮名まじり文の傑作であると感じる。また、「時代小説」とはいっても、決して難解な漢字を使っていない。

余談 新しいもの好きなので、GoogleChrome をさっそく使ってみている。

當山日出夫(とうやまひでお)

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