新常用漢字:新聞社も当事者2008-11-13

2008/11/13 當山日出夫

おがたさんの「もじのなまえ」で、先日の、委員会の様子が報告されている。

http://d.hatena.ne.jp/ogwata/20081111/p1

これを見て、また、コメントを読んで思ったこと。

実は、(新)常用漢字表は、新聞社も、その当事者なのである、ということ。いわれてみれば、あたりまえ。委員会のメンバーを見ればすぐわかること。

だが、これを、報道という視点からみると、当事者であるが故の、バイアスがかかっていることになる。簡単にいえば、「自分に都合の悪いことは書かない。」

今、『朝日新聞』がどんな字をつかっているか。印刷標準字体に準拠である。ただし、「辻」は例外。また、固有名詞(地名)では、葛城市の「葛」(ヒ)と、一般の「葛」(人)、例えば、「葛藤」など、では、字体をつかいわけている。いや、それ以前に、「葛城市」と「葛城山」では、字を変えている。

こんな新聞紙面を作っていて、何が「正しい字であるか」など、新聞社にとっては、ヤブヘビ以外のなにものでもないかもしれない。拡張新字体ですか、康煕字典体ですか、これは、そっとしておきたいことだろう。

ま、ともあれ、次のことは確認しておかねばならない。

(新)常用漢字表について、新聞社も当事者である。ゆえに、客観報道など、期待できない。何を、新聞が報道しないか、が重要な論点をふくむ可能性がある。この意味で、おがたさんの「もじのなまえ」は、常に参照する価値がある、と賞賛しておきたい。

委員会は、公開であるといっても、すべての情報が、すぐに、開示されるというわけではない。参加できる人間にも、限りがある。また、議事録が、公開されるのは、かなり時間が経過してから、である。

當山日出夫(とうやまひでお)

追記 2008/11/13

葛木山→葛城山 に訂正。

新常用漢字:いわゆる康煕字典体2008-11-13

2008/11/13 當山日出夫

小熊さん、コメントありがとうございます。

やはり、「いわゆる」+「康煕字典体」という、表現にならざるをえませんね。

「国字」などの字体は、部分字体を、「いわゆる康煕字典体」に準拠して、という方向でしか、考えようがありません。

ただ、この「いわゆる康煕字典体」を、厳格な規範としてうけとめるか、あるいは、康煕字典体といっても、字体の「ゆれ」はあるのだから、あえて曖昧なままにして、使用するのか。

このあたりの、社会全体のうけとめかたが、今後の課題かと思っています。

當山日出夫(とうやまひでお)

公文書アーカイブズ2008-11-13

2008/11/13 當山日出夫

先ほど、NHKのニュースをみていた。トップは、定額給付金。その中で、ある市長(か、あるいは職員の人)が、かつての地域振興券のときのことを、倉庫から資料を出してきて調べないと、と言っていた。

かつての地域振興券の時、どうであったか、それを知ることができるかどうかは、各自治体における、公文書アーカイブズの問題である。私の住んでいる、ところでは、どうなっているか知らない。

年月や、その政策の意味を考えると、非現用文書だろう。となれば、なにがしかの文書が、アーカイブズされていなければならない。はたして、各地方自治体において、書類が残されているか、また、それが、今回の、定額給付金への対応として、役にたつか。

年金記録問題から、公文書アーカイブズ、アーキビストの公的資格制度へと動いてきたが、思わぬところから、国、および、地方自治体における、公文書アーカイブズのあり方が、問われることになった、と考えている。

當山日出夫(とうやまひでお)

天皇陛下の見識2008-11-13

2008/11/13 當山日出夫

一応、私も、塾員(慶應義塾大学出身)である。したがって、今般の、150周年記念式典について無関心というわけではない。とはいえ、もっぱら興味があるのは、来年の、東京国立博物館での展覧会の方。『グーテンベルグ聖書』が、見られる!!

ところで、『轟亭の小人閑居日記』に、式典における、今上陛下の「おことば」が、のっている。

http://kbaba.asablo.jp/blog/2008/11/11/3905252

ここで、陛下は、近代日本の歴史を、慶應義塾とともに語っておいでである。そのなかに、つぎのようにある、

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日本は修好通商条約調印から三十一年にして、大日本帝国憲法を発布し、翌年には、第一回帝国議会を開くまでに近代国家としての制度を整えるに至っています。

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この間に、いわゆる1868年「明治維新」が入っていない。「開国」から近代日本のスタートを考えている。徳川幕府の瓦解も、明治天皇も、出てこない。このような歴史観というのは、やはり、今上陛下であるからこその発想かもしれない。

明治天皇の名を出さずに、日本の近代を語る。率直に、この発想と姿勢には、賞賛したい気持ちである。

當山日出夫(とうやまひでお)