『思想地図 vol.2』2008-12-31

2008/12/31 當山日出夫

『思想地図 vol.2-特集:ジェネレーション-』(NHKブックス).東浩紀・北田暁大(編).日本放送出版協会.2008

まず、やはり問いかけたくなるのは、なぜ、「世代(ジェネレーション)」であるのか、ということ。この論集の第1号について、これは、世代ということを意識した希な論集であることを、述べた。

『思想地図』:研究者は自分の年齢を言うべきか ( 2008-05-01)

http://yamamomo.asablo.jp/blog/2008/05/01/3430366

そして、この第2号は、「特集:ジェネレーション」である。一般的に考えて、これが、自然科学などの分野であれば、研究者の年齢と、その業績評価は、あまり関係ないだろう。だが、人文学では、そうもいかない。文化的な事象をあつかうとき、研究者自身の年齢(世代)ということは、かなり重要な問題としてある。特に、「世代」ということを語るとき、自分がどの「世代」に属しているかは、重要な要件である。

そして、今の日本ほど、「世代」という問題が重要視されている時代も、また、希であろう。いわゆる「格差論」をふくめ、ネットワーク論においても、しかりである。この論集の第二特集は「胎動するインフラ・コミュニケーション」。ネットワーク社会についての議論は、「世代」抜きには語れない。

ところで、この論集の白眉というべきは、(もちろん、私の独断であるが)、

濱野智史.「ニコニコ動画の生成力(ジェネレイティビティ)-メタデータが可能にする新たな創造性-」(pp.313-354)

であると、読む。(この論文については、あらためて考えてみたい。)そして、

入江哲朗.「「市民性」と批評のゆくえ-〈まったく新しい日本文学史〉のために-」(pp.417-446)

當山日出夫(とうやまひでお)