「飛翔体」は常用漢字で書けないこと2009-04-08

2009/04/08 當山日出夫

小熊さんのコメントを見て、すこし。

たしかに、おがたさんの「もじのなまえ」のコメントやSBMなど見ますと、特定の業界・専門領域では、既に周知の語であった、ということは、わかります。

ただ、私が、気にしているのは、突然「飛翔体」に名称が変わったこと、です。それまでの新聞やテレビなどの報道では、ミサイル、テポドン、などといっていたものが、政府発表で、突然、表に出てきてしまった。だからこそ、当日のテレビ報道のテロップなどでも、めまぐるしく表記が変わって揺れ動いた、と思いまます。はじめから、政府の用語としては「飛翔体」と称するということが判明していたならば、混乱は無かったでしょう。

たまたま、その時刻(日曜日の昼間)テレビを見ていて、各局の対応がまちまちであったこと、同じ局でも揺れ動いたことに(文字のことを考えている人間としては)目がいってしまった、という流れと思っていただければいいでしょう。この時間帯の全部の報道が録画してあると検証できるのですが。

固有名詞ではなく、普通の語(?)として、常用漢字では書けない語が、出てきたとき、どう対応するか、です。まあ、目安なんだから、「飛翔体」と全部漢字で書いてもいいわけですが、朝日新聞などは、ルビつきの表記にしています。これは、やはり、常用漢字(現行)に配慮した結果というべきででしょう。

當山日出夫(とうやまひでお)

『ARG』369号を読んで2009-04-09

2009/04/09 當山日出夫

『ARG』369号を読んでおもったこと、すこし。

今後のARGの活動の方向として、

http://d.hatena.ne.jp/arg/20090405/1238918531

1. 学術に特化したプラットフォーム的なウェブサービスを開始する(academicweb.jp)。

2. ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)の運営主体を個人から組織へと移行する(法人化)。

3. ACADEMIC RESOURCE GUIDE(ARG)の名義で、勉強会・講習会等のイベントを開催する。

の3点があげられている。私としても、賛成。是非とも、この方向で進めていって欲しいと考えている。

なによりも、今年度の後期の授業は、ARGそのものを教材につかう予定。文学部の3回生。前期は、パワーポイントを使っての、プレゼンテーションの練習。それをふまえて、後期に、ARGが毎週刊行になるので、その輪読会、あるいは、パワポをつかってのプレゼンで、自分の気になった記事について述べるなど、やってみたいと思っている。

後期の学生がどれほど来るかわからないが、ともかく、それまで維持していただきたいと切に願っている。

當山日出夫(とうやまひでお)

「飛翔体」を考える集合知2009-04-09

2009/04/09 當山日出夫

こういうのをまさに「集合知」というのかもしれない。「飛翔体」の語をめぐって、まさに、インターネット上で、資料の紹介があり、意見がとびかっている。

その代表の一つが、

日本語練習中
2006年7月5日官房長官声明における飛翔体
http://d.hatena.ne.jp/uakira/20090409

SBMとコメント、トラックバックの機能で、たどっていくと、いろんなことが分かる。Wikipediaのように、一つの記事として集約されない、インターネットの連携の中の「知」ということになるのかと思う。これはこれとして、非常に貴重な体験と感じている。

當山日出夫(とうやまひでお)

活版の本『平安京の紙屋紙』2009-04-10

2009/04/10
當山日出夫

昨日、京都からの帰りに買った本。

町田誠之.『平安京の紙屋紙』.京都新聞出版センター.2009

この本、「はしがき」の部分のみ(8頁)であるが、

用紙:ソフトバルギー
印刷:活版印刷 同朋舎

となっている。見て触って、確かに活版印刷。もちろん、買ってしまった(レジに行ってから、値段が分かった。)

當山日出夫(とうやまひでお)

文選(ぶんせん)2009-04-11

2009/04/11 當山日出夫

印刷・出版関係の本は、よく読む方である。だから、「文選(ぶんせん)」は、馴染みのある語である。しかし、この語、最近は、あまり一般の文章では目にしなくなった。

最近、目にしたのが、

佐野眞一.『誰も書けなかった石原慎太郎』(講談社文庫).講談社.2009

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うちの子会社の印刷工場には、最後は鉛毒で死んだ天才的な文選工さんがいたんです。その彼でも石原さんの原稿だけはひろわなかった。
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これは、石原慎太郎の「悪筆」についての証言。

「文選(ぶんせん)」は、もう死語だな。いまでは、データ入力業、とでもいうか。それも、現在では、「パンチ屋さん」も死語になってしまった。もう、若い人はつかわないだろう。

余計な注
「文選(ぶんせん)」というのは、昔(?)の活版印刷の時代、印刷工場で、活字をひろう(う~ん、これも死語か)職人さんのことをいいます。

當山日出夫(とうやまひでお)

むかしの「飛翔体」2009-04-11

2009/04/11 當山日出夫

すでに御存知の方も多いと思うが、

日本語練習中
1993年5月6月の「飛翔」
http://d.hatena.ne.jp/uakira/20090410

「飛翔体」の語は、以前からつかわれていた。今回の件は、やはり、政治的な意図があってのことと、私は考える。

「常用漢字」に無いから使ってはいけない、とは思わない。そうではなく、政治的な「ことば」とその表記について、気になったということである。私の立場としては。

この場合は、やむを得ざる選択であろう。だが、公的な文書である以上は、常用漢字への配慮はあってしかるべき。ルビをつける、仮名にするなど。「ミサイル」でも「人工衛星」でもないとすると、他にどのような「ことば」があるか。まあ、その後の朝日新聞など見ると、平然と「ミサイル」と書いている。

當山日出夫(とうやまひでお)

「飛翔体」政府と国民のコミュニケーション2009-04-12

2009/04/12 當山日出夫

小形さんのご指摘をうけて、現時点での、私の思うところを整理すると、

1.政府としては、「ミサイル」とも「人工衛星」とも、断定は避けた。これ以外の用語を必要とした。

2.古くから使用されていたことばとして、「飛翔体」がある。これを使うことにした。

3.だが、「翔」の字は、現行の常用漢字表に無い字である。このことに、政府としては無関心であった。

4.あるいは、知ってはいたが、特に難解な字ではないと判断して、強いてつかった。「飛しょう体」とはしなかった。

3にしても4にしても、現行の常用漢字表が、確信犯的に無視されたことは確か。この意味では、まさに、小形さんのおっしゃるとおり。

ところで、「新常用漢字表(仮称)」では、「銑」の字が無くなる予定。そうなると、鉄鋼業関係で、かなり困ることになるはず。これは、日常的につかわない専門用語ということになるのか。だから、別に、無くしてもかまわない。この論法では、「飛翔体」も使ってもかまわない、ということになる。

要するに、政府自らが、「常用漢字」を守る気はない、ということになる。「新常用漢字」がコミュニケーション重視であるならば、政府発表の用語・文字こそ、ルールにしたがうべきである。

當山日出夫(とうやまひでお)

やはり気になる「楷」「於」2009-04-12

2009/04/12 當山日出夫

安岡さんのご指摘のように、日本国政府全体(?)として、あまり、常用漢字をまもろうとはしていないようです。

となりますと、最後には、文科省・文化庁、だけになって、孤塁をまもることなるのか。でも、文化庁でも、「楷書」の「楷」の字を、「新常用漢字表(仮称)」試案、のなかで、ルビつきとはいえ、つかっているし。

書体としての「楷書」の概念がきちんと確立していないと、手書き文字と、明朝体との関係が不明瞭になる。「ていねいなきちんとした字」では、ていねいに書いた「行書」もふくんでしまう。

「於」など、一般の文書用語として必要とおもう。調査対象には、普通の事務的文書など入っていなかった、ということか。あるいは、今は、@(アットマーク)で代用する……これ漢字じゃないから関係ない……

當山日出夫(とうやまひでお)

『ARG』370号の感想2009-04-13

2009/04/13 當山日出夫

アーカイブズ学会の準備と、来月の情報処理学会(CH-82)の原稿で、いそがしい。それにしても、完全にペーパーレス(PDF)になるのに、なんで原稿締め切りが、早くなるのか不思議。無事、Acrobat(9.1)が、Word2007の文書を、PDFにしてくれることに、期待するしかない。もし、ダメだったらどうしよう……である。

ところで、『ARG』370号については、いろいろ面白いことが載っている。そのなかで、まずひとつだけ。

2009-04-24(Fri)~2009-05-02(Sat):
展示会「働く人々の歴史展」
(於・大阪府/エル・おおさか)
http://d.hatena.ne.jp/l-library/20090410/1237290307

いま、まさに、「はたらく」ということが、問い直されている時代。どのように日本人は「はたらい」てきたのか。「はたらく」ことと生活とは、どのようなものであったのか。

この意味では、

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皆様にはぜひ展示品出品のご協力をお願いします。昔の(おおむね20年以上前)職場の様子を写した写真、工具、道具、などありましたら、お貸しください。
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20年たてば、もうわからなくなる。人間の日常生活というのは、そのようなものである。ごく普通のことが、自然と忘れ去られていく。そして、「伝統」というものが、亡霊のごとく出現する、と言ったらおおげさであろうか。ともあれ、「伝統」を考えるとき「日常」を忘れてはならないと思う。

當山日出夫(とうやまひでお)

メーデー2009-04-14

2009/04/14 當山日出夫

エル・ライブラリー、いければいきたいのだが、どうなるか。5月1日は、今のところ、用事がひとつある。

いま、さしあたって、まず、アーカイブ学会の発表の準備、それに、来月のCH研究会の原稿を書かないと。(まだ、両方とも未完成。)

メーデーだが、今の、若い人たち、メーデーと言って、知っているかな? 今度、きいてみよう。

ひょっとすると、「春闘」ということばも、死語になりつつあるかも。私の学生のころは、鉄道のストで、学校が休みになるかどうか、何時の時点でスト回避か、毎年、気にしていたものだが。

それから、「新常用漢字表(仮称)」のパブリックコメント、先ほど送信した。内容は追って時間ができてからにします。

當山日出夫(とうやまひでお)