JSASアーカイブズ学会について思うこと(3)2009-05-02

2009/05/02 當山日出夫

先に書いたことの続きである。

第1回
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2009/04/27/4269302

第2回
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2009/04/30/4277563

JSAS 日本アーカイブズ学会
http://www.jsas.info/

ちょっとGoogleで調べても、「公文書等の管理に関する法律」には次のようにある

http://www.cao.go.jp/houan/171/171-2anbun.pdf

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第2条
この法律において「行政文書」とは、行政機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書(図画及び電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られた記録をいう。以下同じ。)を含む。

第5条
行政機関の長は、公文書等の管理に関する法律第七条に規定する行政文書ファイル管理簿について、政令で定めるところにより、当該行政機関の事務所に備えて一般の閲覧に供するとともに、電子情報処理組織を使用する方法その他の情報通信の技術を利用する方法により公表しなければならない。

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公文書管理法の今国会での成立は、関係者の最も気にしているところである。アーカイブズ学会でも、そのことは、強く強調されていた。

だが、その法案のなかに、上記のような文言、要するに、デジタルも公文書管理の対象である、このことに、今の「アーカイブズ学」は、対応できるであろうか。

まあ、個人の趣味・主義・主張として、デジタルのアーカイブなんて、長期保存もできないし、信用できない。デジタルで記録を残そうなんてとんでもない、と思う人がいても、それは自由である。

しかし、「学会」として、デジタルに積極的にかかわってきたのだろうか。デジタル記録についての、保存や管理の手法について研究してきたか。どう考えても、ここの10年ほど、デジタルを無視した記録や文書の管理・保存などありえない、というのは明白なことになっている、これが私にとっては基本の認識である。そして、これは、おそらく、普通のひとびとの考えることでもあろう。

あれほど社会問題になった、住基ネットは、デジタル技術によるものではないのか。

「アーカイブズ」が「みんなのため」である、としよう。このとき、普通のひとびと「みんな」にとって、自明のことであるデジタル記録や文書の存在を、あえて無視して、そんなものは、アーカイブズの対象ではありません、といいたければ、堂々と、そのように、「学会」として、宣言すればいいのである。この学会は、19世紀的な紙文書だけを対象としています、21世紀のデジタル社会など、考えていません、と。

私の意見は、こうである。いま、アーカイブズ学会に対して、学会に会員として参加している多くの人がもとめているのは、デジタルによる記録や文書の管理、その方法と理論の構築である。学会としては、すでにある、各地の公文書館・文書館の、実務担当者があつまる場として、スタートしたのかもしれない。だが、現在の時点では、すでに、その段階を越えたものとして、社会からのまなざしがそそがれている。デジタルアーカイブの中心的研究組織であることが、求められている。

だからといって、旧来の公文書館・文書館の紙資料の管理・保管が無意味というつもりはない。これはこれで貴重であり、存続しなければならない。だが、それを残すためにも、もはや、デジタル技術は不可欠である。

新たなるアーカイブズ学のために、あえて苦言を呈する次第。

ただ、私が書いたようなこと、目新しくもなんともない。これまで、なにがしか、デジタル技術と文化・社会について考えたことのある人間なら、誰でも思うこと。しかし、それを、どのような共通の基盤とするかには、問題があったと思う。それに、方法論と理論を期待して、アーカイブズ学から学ぶべきものがあると、思っているのである。この期待にこたえるものであって欲しい。

たとえ、紙からデジタルに変わったとしても、「みづから」「みんなのために」「みらいのために」記録をのこす、その理念と倫理は、尊重されねばならない。そして、これこそ、デジタル技術が、えてして忘れがちなことである。アーカイブズ学から学ぶべきものは、貴重である。

當山日出夫(とうやまひでお)

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