図書館の蔵書廃棄をMLAの視点から見ると2009-10-28

2009-10-28 當山日出夫

tanemoriさんのコメントについて、少し考えてみる。

本は地域にあるべき
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2009/10/20/4643919

のコメントのなかで言及のポット出版のブログ
http://www.pot.co.jp/matsukuro/20091022_012237493914733.html
http://www.pot.co.jp/matsukuro/20091025_045159493914775.html
http://www.pot.co.jp/matsukuro/20091026_020453493914786.html
http://www.pot.co.jp/matsukuro/20091027_123210493914816.html

ここをざっと読んでの感想をいえば、MLAの役割が錯綜している。
M=ミュージアム 博物館・美術館
L=ライブラリ 図書館
A=アーカイブズ 文書館
これを総称して「MLA」という。この連携がうまくいっていないことが、日本の問題としてある。さらにいえば、そもそも、近代的な「A(アーカイブズ)」の概念が、確立していないし、社会的に認知されていない。

郷土資料といった場合、これは、MLAがどのように分担すべきことなのか、このあたりの議論の整理がまず必要だろう。

一般論としては、図書館の蔵書の管理の問題。単に、書庫(倉庫)を建てて、不要になった本(かもしれないが、将来、ひょっとすると必要かもしれない)を、とありえず保管しておく。これは、そんなにコストのかかることなのだろうか。よしんば、コストがかかったとしても、世の中から消えてなくなってしまった本を復元する(再刊する)コストに比較すれば、安いものであろう。

また、一方で考えるべきことは、郷土資料館、公文書館、というものの機能である。図書館が、なにもかもかかえこむことはない。文書館をつくって、そこで管理すべきもののあるはずである。あるいは、博物館の方が、適当という資料もあるだろう。

図書館の蔵書管理、不要になった本の廃棄処分は、MLA連携がうまく機能していない不幸なのかもしれない。

そして、最後に言っておかねばならないこと。図書館が、本を廃棄するならば(それはやむをえないとしても)、誰がその決定を下したか、そして、そのリストはどうであるのか、きちんと記録を残さなければならない。図書館の、業務としてのアーカイブズである。このことにかかるコストを惜しむべきではない。

ライブラリにはライブラリの使命がある。そして、その使命をはたすために、ライブラリのアーカイブズが必要なのである。

當山日出夫(とうやまひでお)

コメント

_ tanemori ― 2009-10-29 09時37分23秒

お忙しいなか、ご反応いただき大変恐縮いたしております。
本当にありがとうございます。

當山様のご見解でさらに私の理解が深まりました。
MLAの役割分担やアーカイブスそもそもの認識不足への指摘おっしゃる
とおりと感じました。

また、件のブログ記事と當山様の記事双方でいろいろと検証も試みなければ
ならないものもたくさんあるのだなあとも思いました。

いずれのご見解においても、散見する課題を(本来であれば)ゆっくり腰を据えて
考えなければならないのだろうなと。そういう意味で図書館や公的機関、研究者での
議論や各種の行動に対する労力は大変ではあるけれども、絶えさせてはならないと
痛感しました。

ご反応いただきましたこと、重ねて御礼申し上げます。

追伸:余談?ですが、件のブログ記事、続きがアップされておりました。
    當山様のご見解とも重なる部分もあるなと感じつつ、自身でも
    双方のご意見でばさせていただいております。

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