『ネットがあれば履歴書はいらない』2010-01-22

2010-01-22 當山日出夫

佐々木俊尚.『ネットがあれば履歴書はいらない-ウェブ時代のセルフブランディング術-』(宝島社新書).宝島社.2010

宝島社
http://tkj.jp/book/?cd=01748501

これを読んでいろいろ考えることが多い。特に、学生に教える立場としては、である。

まず、この本は、「エゴサーチ」のことからはじまる。WEBで自分自身を検索してみることである。そして、その結果が、その人間の「価値」を決める要因の一つになる。

たとえば、次のような指摘。

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いまのインターネットの流れからすると、プライバシーというのは将来的にはいまよりもずっとゆるやかになり、個人の情報をよりオープンにすることによって、利便性を高めるという方向におそらくは進んでいくということは間違いないだろう。

(中略)

インターネット世界と現実は全然異なるとみている人もいるだろう。インターネット上のことを”あちら側の世界”と例える人もいるが、その操作をしている人は確実に現実に存在している。そもそもインターネットが別世界だと考えるような時代は終わっている。

p.55

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また、

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情報を発信することでのリターンは他人からは見えず、本人にしか感じることはできない。怖いと感じ何もしない人と、怖さはゼロではないが、そこに面白さ見いだして情報を発信する人との間に気が付けば、天地の差がつく。

p.72

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そして、さりげなく書いてあるが、この指摘は重要である。「これは新たな格差社会なのかもしれない(p.116)」。

ま、ここにこのように書いている私個人のことはおいておこう。考えるのは、学生に、授業の実習としてWEB上で何かをやらせること、その問題である。大学の授業の一部として、たとえば、ブログを作る、Twitterで発言する、などやらせるとして、基本的には、名前を出して、ということになるだろう。(私個人は、この主義でいる。その方が、より「安全」であると考えるから。)

学生個人が特定できるような形でなければ、教師の側としては、評価できない。誰が書いたかわからないでは困ってしまう。ここは、どうしても、名前を出して、ということになる。

だが、これは、同時に、学生が自分の履歴書を常に書いていくようなものである。もうすでに行われているだろう……就職などに際して、学生が、WEBでどのような発言をしているかリサーチするということ、が。

この本、前半は、上述のようなWEB上での情報発信と社会とのコミュニケーションの話し。後半は、それをつかいこなすためのツールとしての、Twitterや、その効果的利用法についてのノウハウ。

いますでにわれわれは、WEBとリアルとが融合した社会のなかにいるのだ、このようなことを考えさせる本である。もはや逃避することはできないだろう。それを理解したうえで、どのような距離をおくか、自分で選択する(それができる人とできない人にわかれるのかもしれないが)、になるのかと思う。

當山日出夫(とうやまひでお)