『科学との正しい付き合い方』2010-05-05

2010-05-05 當山日出夫

とても意欲的な本である。だが、ちょっと誤解されかねないかな、という印象のある本。この本、すでにTwitter上では、かなり話題になっている。著者自身が、非常に積極的に、発言をひろってコメントしている。

『科学との正しい付き合い方』.内田麻理香.ディスカヴァー・トゥエンティワン.2010

http://ameblo.jp/marika-uchida/entry-10479372420.html

そこで、あえて、私なりの「牽強付会」な読み方を、すこし記すと、

「科学」「科学技術」「サイエンス」これらの言葉・用語が、著者なりには整理して使用しているのであろうが、全体を通読すると、雑然とした印象がある。一般には、「科学」も「科学技術」も同じようにつかっていいのだろうし、この本の意図としては、それで十分であると読める。

しかし、こまかに注を見れば、「科学」については、

「反証可能性を持つ仮説のみを科学的仮説とみなす」

が、カール・ポパーの言葉として、示してある。(p.277)

私個人の興味関心からするならば、今のように「科学技術」が一体化した時代だからこそ、「科学」について、「理学」の視点と、「工学」の視点と、両方をうまく整理して説明してほしいものだと思ってしまうのである。

だが、この本は、科学哲学の本ではないので、これは、無理な注文というべきか。それよりも、

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科学技術で思考停止しない、科学技術をこわがらないメンタリティ。それは、「身近なありふれた科学技術を知る」とことらから生まれるのです。(p.214)

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の箇所に代表される、著者の姿勢を尊重すべきだろう。そして、この基本をふまえて、「トランス・サイエンス」(注、p.278)の課題へと、議論がすすんでいくと面白い。この方向での、続編を期待したいものである。

注:トランス・サイエンス。「科学によって問うことはできるが、科学によって答えることのできない問題からなる領域」(p.278)

當山日出夫(とうやまひでお)