電子書籍と印刷とジャパンナレッジ2010-08-22

2010-08-22 當山日出夫

やっと夏の一番いそがしい時期がおわって、すこし時間に余裕ができてきた。今日から、このブログも再回、夏休みも終わりである。

小学館の出している小冊子に『本の窓』がある。この9-10月号に、ジャパンナレッジに、『国史大辞典』がはいったいきさつの記事がのっている。吉川弘文館の社長である前田求恭さん、それから、ジャパンナレッジの社長である相賀昌宏さん、この両名の対談である。

まず、こういっては、みもふたもないが、出版社のPR冊子であるから、その分を適当に割り引いて読むことになる。しかし、そうでありながら、これはと気になる箇所もある。

『国史大辞典』が最初から、「デジタル」を視野にいれた出版を考えていたこと。そのスタートは、昭和40年にさかのぼるよしであるから、当然ながら、パソコンなど、何もない時代である。それが、具体的に、書物として刊行する段階になった時点で、「デジタル」を考えて、写植をえらんだ。その写植(その当時のことだから、いわゆるCTSになるのだろう)の会社が、東京印書館。

そして、その東京印書館が、同時にあつかっていたのが、同じく、ジャパンナレッジにはいっている、重要なコンテンツである、『日本歴史地名大系』。

『国史大辞典』『日本歴史地名大系』、いずれも、最初から、ジャパンナレッジのような形でのオンライン検索を念頭において編纂されたものではないであろう。しかし、最終的には、そのコンテンツをデジタル化することによって、新たな価値を生み出すことになっている。そして、そこで、重要な役割をはたしているのが、印刷業(この場合は、東京印書館)である。

書籍の印刷用のデータは、印刷業が持っている。

著作権は、著作者にあるだろうし、また、実際の編集実務は出版社になる。しかし、デジタルのデータが、どこに存在しているかとなると、印刷業にある。

たぶん、今年から来年にかけて、電子書籍は、おおきな動きをみせるだろう。そのとき、既存の出版社のみならず、視野にいれて考えなければならないのは、IT企業であり、図書館であり、そして、印刷業である、と思う。そして、私の見る範囲で、これらを、すべて総合して考察した電子書籍論というのは、まだ、登場していないように見うける。

少なくとも、電子図書館と、印刷業(書籍のデジタルデータを持っている)の存在をかんがえてこそ、現実に即した電子書籍の論が生まれるのだろうと思う。

當山日出夫(とうやまひでお)