『ネット・バカ』(1)2010-10-13

2010-10-13 當山日出夫

『ネット・バカ』.ニコラス・G・カー/篠儀直子訳.青土社.2010

この本、邦訳のタイトルがどうなのか……という気がしなくもない。副題の「インターネットがわたしたちの脳にしていること」。の方が、むしろ、しっくりとくる。

WEBの時代になったからといって、人間がバカになったというわけではない。この意味でのバカであるならば、人間が、文字というもの、書物というものを発明したときから、その起源があるのであるから。それが、飛躍的に変化をとげたのが、WEBの時代になってからの現象ということになる。

こまかな感想は、時間のある時に。ただ、一言いっておきたいと思うのは、この本は、きわめてすぐれた、電子書籍論でもある、という点である。しかし、私の、たとえば、Twitterのタイムラインで見る限り、あまり、電子書籍論として取りあげられている形跡はない。

電子書籍になって、本をディスプレイで読むようになって、また、その内容も、単なる紙から電子的メディアへの変換にとどまらず、コンテンツも、WEBに近づこうとする状況において、人間が、「本を読む」という行為がどのように変わるのか、非常に興味深い考察がある。端的に言えば、WEBでは、その内容は、「F」の文字のように読まれる。沈思黙考して、書籍のなかなに沈潜していくということがなくなる。

このことの是非では、もはやない。このような時代に我々は生きているのであるという自覚が必要である。

感想の続きはのちほど。

當山日出夫(とうやまひでお)