私的じんもんこん2010覚書(5)2010-12-25

国立国会図書館のデジタルアーカイブ事業2010-12-25 當山日出夫

文字を読むとき、ただ、文字だけを見ているのではない。その前後の文脈のなかで読んでいる。このことが、なかなか理解されていないな、と感じた。

今回のじんもんこん2010で、文字をあつかった発表がいくつかあった。翻刻の支援システム、とでもいえばいいだろうか。それらの発表を聞いていて感じたのは、まだまだ、人文学研究者の仕事の現場の感覚を、つたえるのはむずかしいのか、ということ。

古典籍の翻刻のような仕事・・・昔の写本の字を見ているだけのように見えるのかもしれないが、読んでいるのである。前後の文脈からのこの字は、こうであろう。あるいは、この字のくずしかたは、この文献の筆者のくせから判断して、この字であろう、など。

こういったこと、人文学で古典籍をあつかう人間にとってはあたりまえのことなのだが、意外と、このところが、つたわっていないなと感じた。まあ、発表したのが、大学院生など若い人だったので、このあたりの事情に不案内なのはわからないではない。しかし、その発表を指導する人が、もうちょっと気をつけてもよかったのではないだろうか。わかっているはずなのである。

ちょっとした感覚のいきちがいが、場合によると大きな亀裂にならないともかぎらない。

一方では、実際に古典籍を読む人間にとって、どのようなシステムがあればいいのか・・・この要求をきちんと提示することも大事だろう。これは、相互の問題である。一方的に、情報工学の側の人に責任があるわけではない。この相互のコミュニケーションの場として、「じんもんこん」シンポジウムや、CH研究会が、機能すればと思う。

これが、うまくかみあうならば、これから、まだまだ、CH研究会の未来はある、と思う。それを、どのようにもっていくかは、研究会の運営にかかっているのかもしれない。今後に期待したいところである。

當山日出夫(とうやまひでお)

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