『色弱が世界を変える』2011-06-04

2011-06-04 當山日出夫

伊賀公一.『色弱が世界を変える-カラーユニバーサルデザイン最前線-』.太田出版.2011

タイトルからうける印象は、カラーユニバーサルデザインの本なのである。そして、そのように書いてもあるのだが、本書の大部分をしめるのは、著者(伊賀公一氏)の、自叙伝のようなものである。

色弱(色覚異常)として生まれた、著者が、小学生から、高校に行き、さらには、東京に出て大学生になる。その後、全国放浪の旅に出たり、いろいろとアルバイトをしたり、職業についたりして、現在のCUDOの設立にいたるまでの、経緯が語られている。

この観点では、色覚異常(なお、私は、医学用語として、この用語をもちいる)である人の、体験談として、非常に興味深い。えてして、この種の本は、社会の無理解・差別に対する批判的観点から書かれることが多いようにおもわれるが、本書はそうではない。むしろ、色覚異常者の、それなりの、「青春記」として読めばいいのではないだろうか。

無論、随所に、色覚異常で、どのような社会生活の困難があるか、エピソードがちりばめられている。しかし、それは、社会の無理解を非難するというよりも、そのような色の見え方の人もいるのか、いろんな人がいるものである、このような感想で読むことができる。

そして、最終のあたりで、CUDO(カラーユニバーサルデザイン機構)の活動の話しになり、現在の、からユニバーサルデザインの状況がどのようであるかの報告となっている。

この本を読むと、色覚異常(色弱)が、「障害」であるか否かという論点が、意味のないものに思えてくる。世の中に、色の見え方が、普通とは違っている人がいる、そのような人と、うまく世の中で生活するには、どのような心遣いが必要であるのか、という発想になっている。

カラーユニバーサルデザインが、新たなステージにはいったことを実感させる本である。

當山日出夫(とうやまひでお)