『ひよっこ』あれこれ「夏の思い出はメロン色」2017-05-28

2017-05-28 當山日出夫(とうやまひでお)

ひよっこ
http://www.nhk.or.jp/hiyokko/index.html

第8週 夏の思い出はメロン色
http://www.nhk.or.jp/hiyokko/story/08/

今週の見どころは、なんといっても「海水浴」のシーンだろう。

といっても、海に行っただけで泳いだというわけではない。期待して水着を買って準備してしたのに、その日は朝から雨。しかたなしに映画に行く。その後、雨がやんで、まだ時間があるというので、みんなで海へ。

海の場面は、ほんの短い間だったが、非常に印象的だった。まさに、東京で働いているみね子たちの青春という感じのシーンであった。

それから、残念ながら海に行けなかったかわりに見た映画が、「ウエストサイドストーリー」。この映画を見た後の、みね子たちの、映画の影響され方が面白かった。

ところで、うがって見方をすればであるが、たぶん、海のシーンを撮影したのは、番組の放送が始まる前のことであろう。まだ、三月か。せいぜい、四月だろう。海は冷たいので、とても海につかって海水浴のシーンは撮影できない。というわけで、(みね子たちにはかわいそうだが)朝からのあいにくの雨で行けなくなって、かわりに映画を見たことにした。そして、ぎりぎり夕方の時間になってまだ間に合うというので、海辺に行ってはしゃぐシーンになった。

ということなのかもしれないと思う。そう思ってみるとしても、ただ、雨で海に行けなかっただけではなく、そのかわりに見た映画「ウエストサイドストーリー」のことが、たくみにおりこまれて描かれていたと思う。海に行けなくて残念、かわいそう、という感じではなかった。

このあたり、このドラマの脚本のうまさなんだろうと思って見ていた。

それから、赤坂のすずふり亭でのシーンがよかった。東京で働くみね子には、目標がない。失踪した父を探すとは言っていても、それも心のなかから消えていっている。東京での生活のはげみになるのは、月に一度の給料日に、すずふり亭に行って食事をすること。それも、だんだん値段の高いものを食べる。

しかし、工場の業績が悪くなったせいで、給料が減らされてしまう。ビーフコロッケしか食べられない。そんなみね子を、そっと思いやる鈴子の気持ちが、こころ暖まるものであった。

ところで、銭湯から帰るシーンのとき。焼き芋を買うところで、焼き芋屋のおじさんが手にしたラジオ(それは、みね子たちが作った製品であった思うが)から、流れていたのは、相撲中継。大鵬の時代のことである。ビートルズではなかった。故郷にいるおじさんは、熱くビートルズのことを語っていた。しかし、現実に東京で働いて仕送りをしているみね子にとって、ビートルズはどこにもその存在がない。はたして、みね子での東京での生活は、ビートルズを聴くようなものになるだろうか。

このあたり、地方にいて東京を想像する(ビートルズにそれが象徴される)と、実際に東京で働いている(銭湯の帰りに焼き芋を食べる)と、この違いが、昭和40年ごろの、地方から見た東京と、東京での実際の労働者の生活との違いとして、うまく描かれていたのだと理解する。

今週のコーラスで印象的だったのは、「夏の思い出」。また、土曜日、警察官の綿引が故郷に帰ることになった。その別れのシーン。流れていたのは、「恋はやさし野辺の花よ」であった。特に、昭和のこの時代を代表する歌というわけではないと思うが、とても効果的に使われていた。

来週の予告では、とうとう工場が倒産するらしい。さて、どうなるだろうか。