NHK「祇園 女たちの物語」2017-06-05

2017-06-05 當山日出夫(とうやまひでお)

2017年6月3日放送の、NHKスペシャル「祇園 女たちの物語」、録画しておいて、翌日になってみた。

私の興味のあったのは、ただ一点……「ぎおん」の文字をどう表記するか、である。番組で、画面に出た字幕、それから、字幕表示で表示された文字、すべて、「ネ氏」であった。「示氏」は、一切、つかっていなかった。字幕表示で示される文字は、どことなくギザギザがあった。これは、作字したものだろう。

これはNHKの方針なのだろうか。

たしかに、祇園における、いわゆる伝統的字体としては「ネ氏」の方であるということは、私は、いくつか論文に書いたことがある。しかし、現在では、「0213:04」規格に準拠した文字も、景観文字としては、いくつか観察できる。また、誤字とされる「祗園」の方も、珍しいものではない。

そういえば、以前に放送していた、これもNHKの「ブラタモリ」の祇園の回でも、使用していた文字は、徹底して「ネ氏」の方であった。

やまもも書斎記 2017年4月14日
『ブラタモリ』「祇園」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/04/17/8490529

この文字、現在、一般のコンピュータ……Windows7以降の機種、Windows10などでは、「示氏」の方が出るようになっている。意図的に、フォントを切り替えないと「ネ氏」は使えない。

つまり、NHKの「ぎおん」の表記の方針は、現在のコンピュータ文字の流れに反したものになっている。これが、いつまでつづくだろうか。あるいは、コンピュータ文字が、人びとの言語生活(文字・表記)に、徐々にではあっても影響を与えていくことになるのであろうか。

これからも、この点については、注意して見ていきたいと思っている。