『ひよっこ』における方言(その二)2017-07-14

2017-07-14 當山日出夫(とうやまひでお)

NHKの朝ドラ『ひよっこ』における方言使用のことについて、ちょっと以前に書いてみた。

やまもも書斎記 2017年6月26日
『ひよっこ』における方言
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/06/26/8604596

みね子と島谷がデートした。そのシーンであるが、みね子は相変わらずの茨城方言が抜けていない。その一方で、島谷は、故郷(佐賀)のことばを話さない。共通語で話している。

その前の回。みね子と島谷たちが、バー「月時計」にあつまったとき。この時も、島谷は、自分の故郷の方言を自らは口に出していなかった。女性店主が、言ってみせて、「完璧です」と言っていた。

また、地方出身でありながら、共通語で話しているのは、早苗。バーのシーンで、東北(一関)の出身であると言っていたが、彼女もまた、方言を話さない。

どうやら、このドラマ、登場人物によって、その出身地の方言を話す/話さない、の違いを設定しているようだ。

乙女寮で働いていた女性たち、彼女たちは、みなその出身地の方言を話している。東京にでてかなり時間がたっているはずなのに、変化していない。また、富山出身の漫画家志望の青年二人も、富山方言で話している。

一方、慶應の学生である島谷、一応は自立した生活を送っているOLの早苗は、方言を話さない。

これを、社会的階層と方言使用という観点から考えると、かなり興味深い。

このドラマ、ひょっとすると方言がこれからの展開のキーになるのかとも思っている。みね子たちが乙女寮の同窓会をしていたとき、ふと現れた女優(菅野美穂)に、時子は、その方言を指摘されていた。

しかし、時子は女優を志して劇団にも所属して稽古にはげんでいるという設定。なのに、自分の方言に無頓着であるということは、どう考えてもおかしい。

店で働いているみね子の場合も、お客さんに接するとき、その方言が抜けていない。これは、接客業としては問題ないのだろうか。少なくとも、みね子は、自分の方言にコンプレックスをいだくということは、基本的にない、ということになっている。

女優(菅野美穂)の茨城方言への関心……茨城方言を話す登場人物、みね子、時子、それから、失踪している父親・実……これらをむすびつける糸になりそうである。