形容詞「あづし」2017-07-22

2017-07-22 當山日出夫(とうやまひでお)

『源氏物語』の新しい岩波文庫版をパラパラと読んでいたら、ふと目にとまった。

やまもも書斎記 2017年7月20日
『源氏物語』岩波文庫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/07/20/8623970

物語の冒頭、桐壺更衣が病気になるところ。

「いとあづしくなりゆき」(p.5)

昔読んだ本では、たしか「あつし」だったと思って注を見ると、ここは「あづし」と濁音になっている。典拠は、名義抄と色葉字類抄の「支離 アヅシ」とある。

ねんのためと思って、ジャパンナレッジの日本国語大辞典をひいてみることにした。

すると……「あづし」ではヒットしない。「あづい」でもない。ひょっとすると「あつい」かなと思って、この項目を見るが、該当する説明がない。

しかたないので、紙の本の日本国語大辞典(第二版)をひいてみた。まだ、これは、私の部屋で机に座って手のとどくところにおいてある。紙の辞典の方の項目をおっていくと、「あつし」のところで目がとまった。『源氏物語』のこの箇所の語である。読んでみると、「あづし」の語形もあると書いてある。

このことば、紙の本の辞典を見た方が、簡単に解決がついた。デジタル版(ジャパンナレッジ)は、たしかに便利である。しかし、検索の見出しが、一字ちがうだけでヒットしない。このあたり、日本国語大辞典の編纂方針を再度確認しておいて、頭にいれておかないといけないと思った。ここしばらく、ジャパンナレッジばかり使っていたので、見出しの語形の方針のことを、すっかり忘れてしまっていた。

デジタル版が、紙のものをそのままデジタル化しただけでは、ちょっと使いづらいところがある。この点は、改良の余地があるだろうと思う。その一方で、デジタル版が使えるからといって紙の辞典が不要になることはない。検索のためには、紙の辞書の見出しの一覧性というのは、非常に有効である。

これが、国語辞典であるから、なんとかなったようなものかもしれない。漢字の辞典だったら、一字違う、つまり、文字コードが違うだけで、目指す漢字にたどりつけない。また、デジタル版辞書の字体・字形・フォントデザインの問題もあるだろう。何をもってして「同じ字」とするのか、改めて問いかけてみなければならなくなる。

デジタル版辞書の課題がひとつ確認できたような気がする。