『ひよっこ』あれこれ「大丈夫、きっと」2017-08-06

2017-08-06 當山日出夫(とうやまひでお)

ひよっこ
http://www.nhk.or.jp/hiyokko/index.html

第18週、「大丈夫、きっと」
http://www.nhk.or.jp/hiyokko/story/18/

失踪していた父親(実)がみつかった。そのできごとをめぐっての一週間だった。

今週の見どころは、なんといっても、マンションでの場面、女優、川本世津子と、父親(実)、母親・妻(美代子)、そしてみね子、が顔を合わせるシーンだろう。それぞれに、失踪した父(実)に対しての思いがある。それぞれの思いが、錯綜し対立する。緊迫した場面が、きわめて印象的であった。

このドラマは、悪い人、悪人、敵役、が出てこないといわれている。それは、必ずしも欠点ではないと私は思っている。

第一に、地方から出てきて、東京で働いている「普通」の女の子(みね子)を描こうとするとき、そんなに悪い人がでてくるはずもないだろう。いい人ばかりではないかもしれないが、逆に、世の中、悪い人が必ずいるともかぎらない。

第二に、むしろ、この方が重要かと思うのだが……みね子は、「普通」に生活していながら、父の失踪、数奇なめぐりあわせ、そして、記憶喪失という事態に直面することになる。このうえない不条理を背負うことになる。この不条理に直面する主人公のまわりに悪い人はいない方がいいだろう。

主に、このように考えて、私は、このドラマに悪い人は必要ではないと思っている。

おそらく、これからの物語は、記憶を喪った父親(実)が、「家族」を再構築していくプロセスが描かれることになる。あるいは、さらには、記憶がもどるということもありうるかもしれない。その時、どれほどの、精神的衝撃があるのかわからない。想像するだけだが、失っていた記憶がもどるというのは、本人にとっても、また、周囲の人びとにとっても、きわめて重大な出来事になるにちがいない。その重大なできごとを受けとめる用意が、まわりの人びとになければならない。

だから、この意味において、このドラマでは、いい人ばかりが登場することになっているのだと思う。この方向で考えるならば、この先まちかまえている、父親の記憶の回復は、どんなふうに描かれることになるのだろうかと考えてしまう。

すずふり亭の人たちも、あかね荘の人たちも、みんないい人ばかりである。次週は、奥茨城が舞台になるようだが、その故郷の人たちも、きっといい人ばかりにちがいない。もう出てこないかもしれないが、父親(実)と生活していた女優、川本世津子も、いい人である。悪意があって、隠していたわけではない。

いい人ばかり、ということは、それだけ、これからのドラマの次の展開……記憶の回復……のショックが大きなものがあるということにつながると予想する。その大きな衝撃をうけとめるための準備段階が、いまの時点における、もどってきた父親(実)をめぐる人びとの反応であろう。

この先の展開が楽しみなような、また、ちょっと恐ろしいような気がしないでもない。