『おんな城主直虎』あれこれ「井伊を共に去りぬ」2017-09-26

2017-09-26 當山日出夫(とうやまひでお)

『おんな城主直虎』2017年9月24日、第38回「井伊を共に去りぬ」
http://www.nhk.or.jp/naotora/story/story38/

前回は、
やまもも書斎記 2017年9月19日
『おんな城主直虎』あれこれ「武田が来たりて火を放つ」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/09/19/8679581

最後に直政の成人した姿が出てこなかったら……これは、大河ドラマというようりも、戦国時代ファンタジーになってしまうような、と思ってみていた。武田とか、徳川とか、実在の戦国武将が登場して覇権を争うなかで、井伊谷という土地にうまれた、少女の成長と冒険のものがたり。井伊谷を去って、堺に行くか、というところであった。

ドラマとしては、堺に行って、直虎の堺編があっても、これはこれで面白い展開になっただろうと思う。(どうせ、史実は、よく分かっていないのであるから)。堺のシーンがなかったのは、おそらく、予算の都合かなと思って見た。堺編を作るとなると、堺の街のセットが必要になる。それを作るだけの番組制作予算がなくなったのか、と考えてしまったのだが、うがちすぎた見方だろうか。

ここにきて、直虎のエトスは、再度、井伊谷という土地へのパトリオティズムかなと思わせるところがあった。この土地に住む人びとが安寧にくらせるようにすることが望みであるという意味のことを言っていた。

だが、井伊というイエの再興は、特に考えていない。このところが分裂している。そして、この分裂のなかにこそ、戦国時代ファンタジーになり得る要素があるのだと感じる。

歴史の結果としては、井伊は徳川のもとにつくことになる。これを、現在の我々は知っている。そのキーになる人物が、たぶん成人した虎松(直政)なのであろう。この直政の意思に、これから、直虎がどのようにかかわっていくかが、これからの見どころになるにちがいない。

ところで、ドラマの中でも年月がたったようだ。井伊谷にいたネコ、茶ネコが、白黒のネコにかわっていた。ネコが新しくなったということは、おそらく、井伊のイエも、これから新しい世代に変わっていくことを、表象しているのである。

気になったのは、近藤が去って、徳川の支配下にはいったということは分かるのだが、今は、井伊谷の土地は、だれが統治しているのであろうか。ここのところが、描いていないのが、ちょっと気になる。

そして、おとわ(直虎)は、今、どのような立場なのであろうか。井伊のイエの当主、殿様なのであろうか。それとも、もはや、一介の庶民(百姓)なのであろうか。また、そのどれでもない自由の民なのであろうか。このあたり、今ひとつはっきりしない。堺に行った龍雲丸は、自由の民といっていいのだろうが。

ともあれ、次回以降、直政の登場によって井伊のイエは、また動きだすようだ。楽しみに見ることにしよう。

追記 2017-10-03
この続きは、
やまもも書斎記 2017年10月3日
『おんな城主直虎』あれこれ「虎松の野望」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/10/03/8692699