『死刑 その哲学的考察』萱野稔人 ― 2017-10-13
2017-10-13 當山日出夫(とうやまひでお)
萱野稔人.『死刑 その哲学的考察』(ちくま新書).筑摩書房.2017
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480069870/
死刑についての本である。死刑については、えてしてその賛否の結論のみが議論されがちである。無論、結論として賛成するのか反対するのかは重要である。だが、それにもまして重要なのは、なぜそのように考えるにいたったかの経緯でなくてはならない。そのような立場もあっていいだろう。
この本では、死刑について考察している。主に二つの論点があると思って読んだ。
第一には、道徳的な面からの考察。いかなる場合でも人を殺してはいけないと道徳的に裏付けることは可能か。そもそも、道徳とは、普遍的な規範たりうるものなのであろうか。
第二には、政治哲学的な面からの考察。刑罰の根底にあるものは、人間社会を維持するための応報論であるとする。では、死刑は究極の刑罰たりうるのであろうか。
主に、二つの論点からこの本は論じてある。なかでカントなどへの言及がすこしあるとはいうものの、基本的に、参考文献があってそれを論駁するというようなスタイルはとっていない。ゼロのところが考え始めて、死刑の是非を問うている。また、冤罪の問題についても考察してある。
死刑に賛成する/しないの立場は、読者によっていろいろあるだろうが、このことを考えるのに、この本は、必読だろうと思う。
死刑への賛否としてこの本から読みとるべき点は次の二点かと思う。
第一に、死刑に反対するならば、終身刑ということになる。では、どちらがより重い刑罰であるのか、ということをさらに考えてみるならば、より重い刑罰の方が応報としてふさわしい、と単純にいいきれるのかどうか。
死刑は残酷であるというのならば、では、終身刑は残酷ではないのであろうか。
第二は、冤罪の可能性が制度的にゼロでない以上は、死刑は否定されるべきであるという論点は、尊重しなければならないだろうということ。
この二つの点が、私がこの本を読んで感じたところである。この本は、あくまでも死刑という制度の是非を論じた本である。具体的に、日本で行われている死刑は、絞首刑であるが、その方法の是非については言及していない。もし死刑を認めるならば、どのような死刑の方法がふさわしいか、これがさらに考えるべき問題としてはあることになる。
感情的にあんな悪いやつは死刑にすればいいでもなく、逆に、いわゆる人道的立場からの反対論でもなく、死刑という刑罰の是非そのものを根本的に考えるのに、まずは冷静に、その論のよってきたるところをかんがみる必要がある。
なぜ、自分はそのように考えるのか、その根本をかえりみることこそ、哲学というものであろう。
萱野稔人.『死刑 その哲学的考察』(ちくま新書).筑摩書房.2017
http://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480069870/
死刑についての本である。死刑については、えてしてその賛否の結論のみが議論されがちである。無論、結論として賛成するのか反対するのかは重要である。だが、それにもまして重要なのは、なぜそのように考えるにいたったかの経緯でなくてはならない。そのような立場もあっていいだろう。
この本では、死刑について考察している。主に二つの論点があると思って読んだ。
第一には、道徳的な面からの考察。いかなる場合でも人を殺してはいけないと道徳的に裏付けることは可能か。そもそも、道徳とは、普遍的な規範たりうるものなのであろうか。
第二には、政治哲学的な面からの考察。刑罰の根底にあるものは、人間社会を維持するための応報論であるとする。では、死刑は究極の刑罰たりうるのであろうか。
主に、二つの論点からこの本は論じてある。なかでカントなどへの言及がすこしあるとはいうものの、基本的に、参考文献があってそれを論駁するというようなスタイルはとっていない。ゼロのところが考え始めて、死刑の是非を問うている。また、冤罪の問題についても考察してある。
死刑に賛成する/しないの立場は、読者によっていろいろあるだろうが、このことを考えるのに、この本は、必読だろうと思う。
死刑への賛否としてこの本から読みとるべき点は次の二点かと思う。
第一に、死刑に反対するならば、終身刑ということになる。では、どちらがより重い刑罰であるのか、ということをさらに考えてみるならば、より重い刑罰の方が応報としてふさわしい、と単純にいいきれるのかどうか。
死刑は残酷であるというのならば、では、終身刑は残酷ではないのであろうか。
第二は、冤罪の可能性が制度的にゼロでない以上は、死刑は否定されるべきであるという論点は、尊重しなければならないだろうということ。
この二つの点が、私がこの本を読んで感じたところである。この本は、あくまでも死刑という制度の是非を論じた本である。具体的に、日本で行われている死刑は、絞首刑であるが、その方法の是非については言及していない。もし死刑を認めるならば、どのような死刑の方法がふさわしいか、これがさらに考えるべき問題としてはあることになる。
感情的にあんな悪いやつは死刑にすればいいでもなく、逆に、いわゆる人道的立場からの反対論でもなく、死刑という刑罰の是非そのものを根本的に考えるのに、まずは冷静に、その論のよってきたるところをかんがみる必要がある。
なぜ、自分はそのように考えるのか、その根本をかえりみることこそ、哲学というものであろう。
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