『ジゴロとジゴレット』サマセット・モーム2017-10-14

2017-10-14 當山日出夫(とうやまひでお)

サマセット・モーム.金原瑞人(訳).『ジゴロとジゴレット-モーム傑作選-』(新潮文庫).新潮社.2015
http://www.shinchosha.co.jp/book/213028/

岩波文庫版の『モーム短篇選』(上・下)とは、重複する作品もあるのだが、新潮文庫で、これも新しい訳がでているので、読んでみることにした。

収録作品は、

「アンティーブの三人の太った女」
「征服されざる者」
「キジバトのような声」
「マウントドラーゴ卿」
「良心の問題」
「サナトリウム」
「ジェイン」
「ジゴロとジゴレット」

モームの作品は、モーパッサンの流れのなかに位置するという。その目で読むせいかもしれないが、「キジバトのような声」は、なるほど、とにやりとするところがある。

そして、不思議な印象を残す作品は、「マウントドラーゴ卿」。(これは、岩波文庫版の方にも収録されている。)モームの他の作品とは少し傾向が異なるといっていいかもしれないが、何かしら奇妙な読後感がある。

読みながら付箋をつけた箇所。

「だが、わたしは物わかりのいい人間より、ちょっと面倒な人間のほうが好きなのだ。」(p.124)

まさに、このような人間を見る視点こそモームの面目というべきなのであろう。一筋縄ではいかない、その内面に屈折した何かをもっているような人間、このような人間を描かせたら、おそらく、モームの短篇が、世界の文学のなかで、まず取り上げられることになるのだろうと思う。

短編小説を読む文学の楽しみということであるならば、モーパッサン、それから、モーム、ということになるのだろう。