『わろてんか』あれこれ「一生笑わしたる」2017-10-21

2017-10-21 當山日出夫(とうやまひでお)

わろてんか
https://www.nhk.or.jp/warotenka/index.html

第3週「一生笑わしたる」
https://www.nhk.or.jp/warotenka/story/03.html

前回は、
やまもも書斎記 2017年10月15日
『わろてんか』あれこれ「父の笑い」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/10/15/8705792

明日、明後日と、ちょっと家を留守にする。外に出てまで、ノートパソコンで仕事をしたいとは思わないので、今日、土曜日まで見たところでの思うところなどいささか。(普段なら日曜日にアップロードするのだが、土曜日のうちにアップロードして出かける。)

てんは藤吉と恋におちる。蔵にとじこめられたてんのもとに、藤吉はしのんで通ってくる。このあたり、ナレーションで言っていたように、ロミオとジュリエットであると思わせる。許されるぬ恋。いかにもという設定だが、これはこれで、ロマンスとして見ればいいのだろう。

だが、どうにも藤吉が頼りない。大阪の米問屋の長男だということだが、商売の方に関心はない。芸能の世界に関心がある。だからといって、その芸がものになっているかというとそうでもない。商家の旦那芸にもおよばない。どうやら芸人のとしての才能もないようだ。このだらしない、才能もない、藤吉とてんとのドラマがこれから始まる。

その藤吉が、ついにてんと一緒になって大阪に帰るところで今週は終わった。これから、てんは苦労することになるのだろうと思う。

ところで、この週も、伊能栞が登場していた。興味深いのは、そのことば。NHKの番組HPを見ると、大阪の伊能製薬の社長の息子、神戸で貿易商をいとなむ青年実業家とある。なるほど、明治の時代になって、ビジネスの世界で生きている。しかも、世界を視野にいれているということのようだ。

気になるので、番組HPをさらに見ると……次のようにある。

東京生まれの東京育ち。大阪の伊能製薬社長の息子だが正妻の子でないため、神戸で貿易会社を興して実家とは距離を置いている。

この伊能栞は、大阪方言で話してはいない。東京生まれの東京そだちということなら、大阪方言を話していなくでも不思議ではない。だが、京都の藤岡屋の婿にむかえるという話があったのに、正妻の子ではない、というのがちょっとひっかかるが。あるいは、強いて考えるならば、大阪方言をつかわない、東京方言で話すという設定のため、あえて、東京生まれの非嫡出子という設定にしたのだろうか。

ドラマにおける方言の問題については、前作『ひよっこ』においても、何回か書いたことがある。佐賀出身の慶應の学生、島谷は、佐賀方言を話していなかった。それと似たような状況として、伊能栞の立場もあるのだろう。

青年実業家として新しいビジネスの世界に生きる伊能栞に、大阪方言はにつかわしくない。大阪の商人、あきんど、ではなく、近代になって新しく世界で活躍する実業家として、登場している。ということは、この伊能栞は、これから、てんが藤吉を苦楽をともにするなかで、それによりそって援助する……近代の芸能ビジネスという観点から……ということになるのだろう。そして、たぶん、てんと伊能栞との関係に恋はないのだろう。

このドラマは、大阪の芸能ビジネスの世界を描くことになるはずであるが、その中で、伊能栞がどのようにからんでくるか、大きな楽しみである。古くからの大阪商人というのではない、新しい時代のビジネスマンとしての視点から、どのように芸能の世界を見ることになるのか、このところに注目していきたいと思っている。

伊能栞の新しいビジネスを象徴しているのが、そのことば……東京方言……なのである。

追記 2017-10-29
この続きは、
やまもも書斎記 2017年10月29日
『わろてんか』あれこれ「始末屋のごりょんさん」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/10/29/8716177