『灰色の密命』ロバート・ゴダード2018-02-10

2018-02-10 當山日出夫(とうやまひでお)

ロバート・ゴダード.北田絵里子(訳).『灰色の密命』(上・下)(講談社文庫).講談社.2017
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062936217
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?isbn=9784062936224

「1919年三部作」の第二部にあたる。第一部、『謀略の都』については、すでに書いた。

やまもも書斎記 2018年2月9日
『謀略の都』ロバート・ゴダード
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/02/09/8785083

『謀略の都』がゴシック・ロマンスという雰囲気のある作品であったのに比べると、第二部『灰色の密命』は、いわゆるジェットコースター的展開のスパイ冒険小説。いや、主人公のマックスは元パイロットだから、敵味方入り乱れての空中戦的展開と言ってもいいかもしれない。

第一部をうけて、英国のスコットランドの港街からこの小説ははじまる。そこで待ち受けている謎のミッション。そこから始まって、英国、フランスを舞台にして、波瀾万丈の大活劇となる。

いったい誰が敵で、誰が味方か……裏切り、謀略……が、それも、この第二部の中程をすぎると、敵と味方がはっきりしてくる。最終的な敵は、ドイツの謀略組織、それをあやつる謎のドイツ人。

この作品、主人公は英国の貴族であり外交官のマックス。その家族(兄やその妻、叔父など)も登場する。第一部では、比較的背後にかくれていてマックスの英国での生いたちの説明ぐらいの役割であった。だが、この第二部になると、その英国貴族の動きが、話しの本筋にからんでくる。そして、この英国貴族のある一族の物語……それは、マックスの父の外交官としての経歴とも深く関連しているのだが……があることによって、小説に、深みと厚みをもたらしている。単なる、スパイ冒険小説にとどまっていない。英国貴族小説といった趣もある。

また、この第二部でも、基本的に歴史的事実には忠実である。第一次大戦後のパリ講和会議を背景にしている。

ところで、この第二部『灰色の密使』の終わり方、これは……どうしても、次の第三部を読みたくなる。そして、第三部は、どうやら日本が舞台になるようだ。これも楽しみに読むことにしよう。

追記 2018-02-15
この続きは、
やまもも書斎記 2018年2月15日
『宿命の地』ロバート・ゴダード
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/02/15/8788216