『誰がために鐘は鳴る』ヘミングウェイ(その四) ― 2018-05-25
2018-05-25 當山日出夫(とうやまひでお)
続きである。
やまもも書斎記 2018年5月21日
『誰がために鐘は鳴る』ヘミングウェイ(その三)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/05/21/8856127
この作品を読んで感じることの一つは、スペインへの思い……それは、もはや情熱とでも言うべきかもしれない……である。ヘミングウェイのスペインの関心は『日はまた昇る』を読んでも、強く感じるところである。そのスペインへの情熱が、この『誰がために鐘は鳴る』でも、作品に通底するものとしてある。
そもそも、なぜ、スペイン内戦が舞台の小説なのか。主人公(ジョーダン)は、アメリカでスペイン語教師をしていたということのようだが、何故、国を離れて異国の戦いのなかに身を投じているのか。それは、まさに、その土地(スペイン)に引き寄せられるようにして、としかいいようがない。
そして、スペインを象徴するものとしては、闘牛がある。この作品中にも、闘牛についての記述が多く見受けられる。
近代のアメリカ文学については疎いので、何故、ヘミングウェイがスペインに魅せられているのか、そのあたりの事情には疎い。しかし、『日はまた昇る』や『誰がために鐘は鳴る』を読んで、作者が、スペインという土地と、そこに住む人びと、そして、闘牛に、心を寄せていることは読み取れる。
無論、これらの小説の中で描かれているのは、あくまでも、アメリカ人であるヘミングウェイの目から見たスペインである、ということは考えておくべきだろう。だが、そのようなことを配慮するとしても、ある時代において、スペインというものがもっていた魅力を存分に語った文学作品であることは、確認できることだろう。
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