『ワーニャ伯父さん』チェーホフ2018-07-16

2018-07-16 當山日出夫(とうやまひでお)

かもめ

チェーホフ.神西清(訳).『かもめ・ワーニャ伯父さん』(新潮文庫).新潮社.1967(2004.改版)
http://www.shinchosha.co.jp/book/206502/

今日は、『ワーニャ伯父さん』である。チェーホフの著名な四戯曲では、二番目になる。新潮文庫版では、『かもめ』と同じ巻にいれてある。『かもめ』については、すでに書いた。

やまもも書斎記 2018年7月9日
『かもめ』チェーホフ
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/07/09/8912315

この作品については、ラストの次の台詞を引用しておきたい。

「ソーニャ でも、仕方がないわ、生きていかなければ! (間)ね、ワーニャ伯父さん、生きていきましょうよ。長い、はてしないその日その日を、いつ明けるとも知れない夜また夜を、じっと生き通していきましょうね。運命がわたしたちにくだす試みを、辛抱づよく、じっとこらえて行きましょうね。今のうちも、やがて年をとってからも、片時も休まずに、人のために働きましょうね。(以下、略)」(p.238)

ちょっと長めの台詞であるが、この台詞の中に、この作品の語らんとしていることが、凝縮されてある。最後のこの台詞になって、ようやく、このドラマが終わるという感慨をもって読み終えることができる。

このようなチェーホフの作品、特に戯曲で端的に表されている、人生に対する賛美の念……これが、若いときにはわからなかったといってよい。『ワーニャ伯父さん』も、若い時に、古い新潮文庫版で読んだかと覚えているのだが、特に、ここの台詞が記憶に残っているということはない。強いていえば、それがまさに若い時の読書というものであったのかもしれない、と今になって感じる。(若いころは、ロシア文学といえば、ドストエフスキーというような感じで本を読んでいた。)

私も、この年になって、チェーホフの作品を再読してみて、『かもめ』の「忍耐」、そして、『ワーニャ伯父さん』の、この生きることへの意思、これにつよく感銘をうける。そろそろ夏休みになる。残りの戯曲『桜の園』『三人姉妹』も、順番に読んでおきたいと思う。どれも四幕の、比較的短い作品である。ちょっと時間のとれるときに、じっくりと味わって読んでおきたいと思っている。

追記 2018-07-21
この続きは、
やままもも書斎記 2018年7月16日
『三人姉妹』チェーホフ
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/07/21/8922202

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