日曜劇場『この世界の片隅に』第一話2018-07-18

2018-07-18 當山日出夫(とうやまひでお)

TBS日曜劇場『この世界の片隅に』第一話
http://www.tbs.co.jp/konoseka_tbs/story/v1.html

このドラマの漫画(原作)を読んだのは、一昨年のことになる。

やまもも書斎記 2016年12月11日
こうの史代『この世界の片隅に』
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2016/12/11/8273353

日曜日の放送を録画しておいて、見て、文章を書いてとなると、水曜日のアップロードになる。(火曜日は、通例のこととして『西郷どん』について書いている。)

このドラマを見ておきたいという気になったのは、やはり脚本の岡田惠和によるところが大きい。岡田惠和は、これまでNHKの朝ドラの脚本をいくつか書いている。『ちゅらさん』(2001)、『おひさま』(2011)、『ひよっこ』(2017)である。これらはほとんど全部の回を見ている。『おひさま』は、再放送を含めれば、全部の回を見たと覚えている。太平洋戦争の時代に、「普通」に生きてきた一人の女性(陽子)の物語であった。特に何をなしとげたというわけではない、ごく「普通」に生活している人びとの生活の様子が、きめ細やかに描かれていた。

その岡田惠和が、『この世界の片隅に』をどのように描くか……これは見ておきたいと思った。

一回目を見た感想としては、かなり原作に忠実に雰囲気を出しているなということ。

ただ、大きく改作してあるのが、現代の視点を持ち込んでいることである。呉の街にいた北條すずという女性を探してやってくる、男女の二人。この二人が、どういう関係か(恋人どうしのようであるが)、また、なぜ北條すずのことを知っているのか、このあたりは、まだ説明されていない。(このあたり、『おひさま』でも、現代になってから、過去を回想するという枠組みを使ってドラマが作られていたのを思い出す。)

それから、実写ドラマとして作った場合、気になるのが、冒頭のいくつかのシーン。海苔を売りに行って、まだ小さい北條周作と出会う場面、人さらいに連れ去られそうになるところである。それから、座敷童の少女(リン)のこと。これらのシーンは、漫画というメディアで描くと、どことなく、ふんわりとした思い出、本当にあったことなのかどうか定かではない幻想的なシーンとして描ける。夢のような幻想的な場面として、漫画の冒頭に序章的に入れられていて、違和感がない。だが、実写ドラマではそうはいかない。リアルに感じてしまうことになる。

あえて省略してもよかったかもしれないとこかもしれない。ただ、その場合、なぜ周作がすずの名前を知っているのかが分からなくなってしまう。このあたり、脚本としては、難しいところだったろうと思う。

この作品(原作の漫画)の魅力は、太平洋戦争中の人びとの暮らしを、緻密な考証のもとに、リアルに、だが、その一方で、抒情的に、また、場合によっては、幻想的な雰囲気をもって描き出したところにあると思っている。

この原作の雰囲気を、ドラマではうまく表現していたように思う。主演の松本穂香(すず)の雰囲気が、非常にいい。原作(漫画)は原作として、また映画(アニメ)はそれとして、さらに、テレビドラマはそれとして、見ればいいと思っている。その中にあって、精細な時代考証の裏付けをもちながら、ある時代を「普通」に生きた人びとの物語を抒情的に描き出すことが出来ていればいいのだと思う。

そこに特に、思想性とでもいうべきものを持ち込むことはないだろう。この意味では、『ちゅらさん』で沖縄を描きながら、特に、日本と沖縄の歴史的意味などをドラマに持ち込むことをあえてしなかった岡田惠和の脚本を信頼しておきたいと思っている。

また、このドラマ、ある意味では、NHKの朝ドラにならって作っている印象がある。脚本しかり、キャストしかり、である。このあたりのことについては、報道でもとりあげられているようだ。

毎日新聞
http://mainichi.jp/articles/20180716/dyo/00m/200/021000c

ともあれ、原作の漫画を再読してみて、次週も楽しみに見ることにしよう。

追記 2018-07-25
この続きは、
やまもも書斎記 2018年7月25日
日曜劇場『この世界の片隅に』第二話
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/07/25/8924945