『失われた時を求めて』(岩波文庫)(2) ― 2018-11-03
2018-11-03 當山日出夫(とうやまひでお)

岩波文庫版の『失われた時を求めて』の第二巻である。第一巻につづけて読んだ。
この巻には、「スワン家の方へⅡ」として「スワンの恋」「土地の名-名」が収録してある。第一巻が、主に「私」の回想であったのに対して、この巻の「スワンの恋」では、スワンが主人公になる。(突然の変化にややとまどって読んだのだが。)
内容もがらりとかわる。スワンとオデットの恋が描かれる。そして、ヴェルデュラン夫人のサロンの様子。当時のパリのブルジョアである。
このあたりの歴史的、社会的背景については、私はほとんど知識がない。解説をたよりに理解したところでは、ブルジョア階層は、貴族とはまたちがった社会的階級に属していた。
それから、オデットという女性。この翻訳では、「ココット」(粋筋の女)となっている。これが、今の現代日本からはよく分からない存在である。強いて別の訳語をあてるなら、高級娼婦とでもなるのかもしれない。
ブルジョアのサロンに参加して、男性を相手にする。そこで、かなりの金額が動いているようである。だからといって、その金を出している男性に従属しているかというとそうでもない。独立した人格をもって判断し、行動している。ゾラの描いた「ナナ」などが、これに該当するのだろうか、などと思ってみるのだが、どうなのだろうか。
ともあれ、「スワンの恋」では、スワンのオデットへの恋、それもどちらかといえば片思いになるのだろうか、それが細かな心情描写で延々と書いてある。読んでみて、これは、一種の「恋愛論」なのだろうか、と思ったりもした。
はっきりいってよく分からないところもあるのだが……この作品におけるオデットの存在は、おそらく、文学に描かれた魅力的な女性のなかでも、際立っていると感じる。オデットは、スワンをどうおもっているのだろうか。恋敵(フォルシュヴィル)との間で、たくみに動き回って、スワンを手玉にとっているようである。
一九世紀末のパリのサロンを舞台にした、ブルジョア階層の恋愛物語、そのなかで自立した個性をもった女性としてのオデットの魅力、その魅力に振り回されるスワンという男性……それが、いくぶん滑稽な感じで描かれている。
次の第三巻を読むことにしよう。
追記 2018-11-08
この続きは、
やまもも書斎記 2018年11月8日
『失われた時を求めて』(岩波文庫)(3)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/11/08/8994163
この続きは、
やまもも書斎記 2018年11月8日
『失われた時を求めて』(岩波文庫)(3)
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