『失われた時を求めて』岩波文庫(7)2018-11-17

2018-11-17 當山日出夫(とうやまひでお)

失われた時を求めて(7)

プルースト.吉川一義(訳).『失われた時を求めて 7』ゲルマントのほうⅢ(岩波文庫).岩波書店.2014
https://www.iwanami.co.jp/book/b270833.html

続きである。
やまもも書斎記 2018年11月15日
『失われた時を求めて』岩波文庫(6)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/11/15/8998999

この巻で、やっと半分である。岩波文庫版では一四巻になる予定。現在、一二巻まで刊行。

読んで感じるところは次の二点だろうか。

第一には、この巻の始めの方のアルベルチーヌのとの恋。

つぎのような箇所。

「アルベルチーヌの頬に接吻できると知ることは、私にとって頬に接吻する歓び自体よりも一段と大きな歓びだったかもしれない。」(p.56)

そして、実際に接吻の後には次のようにある。

「こうした不愉快な兆候によって私は、とうとう自分がアルベルチーヌの頬に接吻しているのだと悟った。」(p.63)

ここに描かれているのは、恋そのものよりも、恋についての意識である。

第二には、ゲルマント公爵夫人の晩餐会の様子。

この部分は、はっきり言って難渋したところであるが、しかし、それでも、その晩餐会での貴族たちの会話のやりとりのなかに、はいりこんでしまうことに気付く。何を言っているのか、注釈を読んでもよくわからない。だが、分からないなりに、その会話の雰囲気とでもいうべきもののなかに包み込まれていく読書体験がここにはある。

以上の二点が、この巻で印象に残るところである。

そして、最後のところでスワンのその後を感じさせる描写でおわっている。

ふとおもいたって読み始めた『失われた時を求めて』である。ここまで読んだら最後まで読んでおきたい。岩波文庫版では一二までしかない。未刊の部分は、集英社文庫版で読むことになるだろうかと思う。ここしばらくは『失われた時を求めて』の世界のなかにひたっている毎日である。

追記 2018-11-19
この続きは、
やまもも書斎記 2018年11月19日
『失われた時を求めて』岩波文庫(8)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/11/19/9000570