『許されざる者』レイフ・GW・ペーション2018-12-08

2018-12-08 當山日出夫(とうやまひでお)

許されざる者

年末になってミステリのシーズンである。今年も、買うだけは買っておいて積んだままになっている本がかなりある。そんな中の一冊。この作品、「ミステリが読みたい!」では、八位のようだ。

レイフ・GW・ペーション.久山葉子(訳).『許されざる者』(創元推理文庫).東京創元社.2018
http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488192051

文庫本の帯を見ると……「CWA賞、ガラスの鍵賞 5冠獲得」とある。期待して読んでみた。

主人公は元警官のヨハンソン。脳梗塞でたおれて病院に入院する。その主治医がかたる。牧師だった父が、ある少女誘拐殺人事件の犯人について懺悔で知っていたという。だが、その事件は、すでに法律的には時効を迎えている。さて、どうすべきか。

この作品、一つには、北欧警察小説である。元警官が主人公とはいえ、その元の部下などが捜査に協力する。

さらには、時効となった犯罪をどのように裁くことになるのか、ということがある。この点については、この作品はそれなりに説得力のある終わり方になっている。

この作品の著者、海外ではかなり有名らしい。だが、日本には未紹介であった。この作品の主人公・ヨハンソンのシリーズもあるとのこと。北欧警察小説ということで、これから、この著者の作品が、順次翻訳されていくことになるだろう。これは楽しみであもある。

ただ、私の場合、たまたまであるが、この作品を読むとき……読み始めたところで、ふと思い立って、『失われた時を求めて』を読み始めたということがある。途中、一ヶ月ほどの中断があって読んだ。やはり、このての作品は、いっきに読んでしまった方がいい。

北欧警察小説の佳品というべきであろう。

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_ じゅうのblog - 2019-05-23 21時41分24秒

スウェーデンの作家「レイフ・GW・ペーション」の長篇ミステリ作品『許されざる者(原題:Den Doende Detektiven、英語題:The Dying Detective)』を読みました。
[許されざる者(原題:Den Doende Detektiven、英語題:The Dying Detective)]

「アーナルデュル・インドリダソン」、「ジョー・ネスボ」の作品に続き、北欧ミステリが続いています。

-----story-------------
CWA賞、ガラスの鍵賞など5冠獲得!
北欧ミステリの重鎮による究極の警察小説

国家犯罪捜査局の元凄腕長官「ラーシュ・マッティン・ヨハンソン」。
脳梗塞で倒れ、一命はとりとめたものの、右半身に麻痺が残る。そんな彼に主治医の女性が相談をもちかけた。
牧師だった父が、懺悔で25年前の未解決事件の犯人について聞いていたというのだ。
9歳の少女が暴行の上殺害された事件。
だが、事件は時効になっていた。
「ラーシュ」は相棒だった元捜査官や介護士を手足に、事件を調べ直す。
犯人をみつけだし、報いを受けさせることはできるのか。
スウェーデンミステリ界の重鎮による、CWA賞、ガラスの鍵賞など5冠に輝く究極の警察小説。
解説=「杉江松恋」
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人呼んで"角の向こうを見通せる男"、「ラーシュ・マッティン・ヨハンソン」… そんな伝説の国家犯罪捜査局の元凄腕長官を主人公にした物語、、、

主人公の「ヨハンソン」は、伝説の捜査官というだけではなく、警察組織内で"オーダーレンから来た殺戮者"と恐れられたほどの鬼上司でもあったようですね… 本作品に至るまでの物語はシリーズ化されており、シリーズが始まった1978年(昭和53年)、当時の「ヨハンソン」はまだペーペーの捜査官で、同期の親友「ヤーネブリング」と共に夜な夜なストックホルムの街をパトロールしていたらしいです。

「ヨハンソン」はそこから、最終的に国家犯罪捜査局の長官にまで上り詰めたんですから、スウェーデンミステリ史上最も出世した主人公ですね… 本作品は、「ヨハンソン」が定年退職したあとに巻きこまれた事件を描いた物語で、シリーズ最終章とも呼べる作品、、、

本作品がとても愉しめたので、これまでのシリーズも読んでみたいのですが… 邦訳されていないようです。残念。


2010年(平成22年)7月5日、「ヨハンソン」はストックホルムのカールベリス通り66番にあるホットドッグ屋台〈ギュンテシュ〉でお気に入りのホットドッグを買うが、いざひと口かじろうとした瞬間、脳塞栓の発作を起こし、危ういところで命を拾う… 国家犯罪捜査局元長官の「ヨハンソン」にとっては青天の霹靂ともいうべき出来事であった、、、

右半身に麻痺が残ったほか、かつては部下たちに「角の向こう側が見通せる」と畏怖された頭脳にも以前ほどの切れが戻らない… 病床で失意を噛みしめる「ヨハンソン」に、主治医の「ウルリカ・スティエンホルム」が驚くべきことを打ち明けた。

牧師だった彼女の父は、ある殺人事件の犯人を知っているという女性から懺悔を受けたものの、聖職者の守秘義務ゆえに誰にも口外できず、悔いを残したまま亡くなったのだという… それは25年前の1985年(昭和60年)6月に「ヤスミン・エルメガン」という9歳の少女が殺害された事件で、警察の初動捜査が遅れたことなどが災いして、迷宮入りしていた、、、

スウェーデンでは2010年(平成22年)に法改正が行われ、殺人を含む重大犯罪については時効が廃止されたが、それも同年7月1日以降に時効となるもののみが対象である… 「ヤスミン」の事件は一足早く時効が成立してしまっていた。

つまり、「ヨハンソン」が犯人を突き止めたとしても法で裁くことはできないのだ… それでも「ヨハンソン」は、このようなおぞましい事件がいまだに未解決だということに元長官としての責任を感じ「ヤスミン」事件を解決することを決意する、、、

「わが主が、25年前の古い殺人事件に正義をもたらすために、
 頭に血栓の詰まった意識不明の元警官をお前さんの元へ送ったとでも言うのか。
 さらには、たった数週間ちがいで新しい法律に間に合わず、時効を迎えさせたとでも?」

「ヨハンソン」による執拗な犯人捜しが始まる… 思うように身動きのとれない「ヨハンソン」は、同期の元相棒で親友の「ボー・ヤーネブリング(ヤーニス)」や、元部下の「シェル・ヘルマンソン(ヘルマン)」、介護人の「マティルダ(ティルダ)」、兄「エーヴェルト」から派遣された用心棒のロシア人の若者「マキシム・マカロフ(マックス)」、妹の夫で元会計士の「アルフ・フルト」等の協力を得ながら、真相に近付いていく。

脇を固める個性豊かな仲間たちが印象的でしたね… 身体の自由が利かない「ヨハンソン」を、年齢も出身もバラエティーに富んだ仲間たちが常にサポートしているんですよね、、、

彼らの協力と「ヨハンソン」の論理的な推理によって、犯行現場や犯人が徐々に特定される… しかし「ヨハンソン」の前には難題が立ちはだかっていた。

この事件は時効を過ぎてしまっている… 見つけだした犯人を、いかにして罰するのか――。

「ヨハンソン」は、犯人と直接接触… 時効になっていない他の犯罪や母親の自殺を自らの殺人だったと証言して自首し、自ら懲役を受けることを促す、、、

犯人の判断は!? いやいや、ここからが衝撃的な展開でしたね… 賛否両論があるエンディングだと思いますが、個人的にはスッキリするオチでしたね。


「ヨハンソン」の、まず現状を受け入れる… という考え方が印象に残りました、、、

これって、生活や仕事において、大切なことですよね… さすが元凄腕捜査官ですね。



以下、主な登場人物です。

「ラーシュ・マッティン・ヨハンソン」
 国家犯罪捜査局の元長官

「ボー・ヤーネブリング(ヤーニス)」
 ストックホルム県警の捜査課の元捜査官

「パトリック・オーケソン(パト2)」
 県警の警部補

「シェル・ヘルマンソン(ヘルマン)」
 県警の犯罪捜査部の警部

「エーヴェルト・ベックストレーム」
 ヤスミン事件の捜査責任者

「ピエテル・スンドマン」
 ミリヤムの知り合いの警部補

「リサ・マッティ」
 公安警察局本部の局長補佐

「ピア」
 ラーシュの妻

「エーヴェルト」
 ラーシュの長兄

「アルフ・フルト」
 ラーシュの妹の夫

「マティルダ(ティルダ)」
 ラーシュの介護士

「マキシム・マカロフ(マックス)」
 エーヴェルトから派遣されたロシア人

「マッツ・エリクソン」
 経理士

「ウルリカ・スティエンホルム」
 ラーシュの主治医

「オーケ・スティエンホルム」
 ウルリカの父、牧師。故人

「アンナ・ホルト」
 ウルリカの姉。検察官

「ヤスミン・エルメガン」
 二十五年前に殺された少女

「ヨセフ(ジョセフ・シモン)」
 ヤスミンの父

「ミリヤム」
 ヤスミンの母

「マルガリエータ・サーゲルリエド」
 オペラ歌手

「ヨハン・ニルソン」
 マルガリエータの父

「ヴェラ・ソフィア・ニルソン」
 ヨハンの妹

「スタッファン・レアンデル・ニルソン」
 ヴェラの息子

「エリカ・ブレンストレーム」
 マルガリエータの家政婦