『いだてん』あれこれ「夜明け前」2019-01-08

2019-01-08 當山日出夫(とうやまひでお)

『いだてん』第1回「夜明け前」
https://www.nhk.or.jp/idaten/r/story/001/

今年のNHK大河ドラマは、『いだてん-東京オリムピック噺-」である。

第一回を見て感じることは……語りの複雑さを、ストーリー展開の勢いで突き抜けて見せた、といったところだろうか。

よく考えてみると、このドラマの構造はきわめて複雑である。昭和34年の古今亭志ん生からはじまる。その語りでもってこのドラマ全体が進行する。まず、1964(昭和39)年オリンピックの招致のエピソード。そして、さかのぼって明治。その中で、志ん生自身の若い時のことが出てくる。それを交えながら、明治の終わりごろ、日本で初めてオリンピックに参加することになる、そのいきさつが描かれる。

とにかく、第一回は勢いがあった。スピーディーである。

だが、これも考えてみるならば、スピードでもって、余計な議論をふっとばして見せた、このようにとれなくもない。

ドラマの第一回で出てきたことであるが、何のためにオリンピックに参加するのか、スポーツとは何か。ただ、勝敗を争うだけではなく、参加することに意義があるのである……嘉納治五郎は、このように語っていた。

しかしである……オリンピックに参加することに意義があるという名目のもとに、参加選手に「日本国」「日の丸」を背負わせてきたのが、日本とオリンピックの歴史であったのではないか。いや、来年(もう来年のことになってしまっている)2020年の東京オリンピックにおいても、メダルの目標を議論しているありさまである。本当に「参加することに意義がある」とするならば、メダルなど議論すべきではないはずである。

そして、「日の丸」を背負わされている競技の代表が、柔道でもある。東京オリンピック(64年)の時のことを思い出してみれば(私は、記憶にもっている……私は昭和30年の生まれ、東京オリンピックの時は小学生だった)、まさに「日の丸」のために柔道という競技があった。

その柔道のことで、この第一回のしめくくり「紀行」としていたのは、なんとも皮肉な番組作りであることかと思った。(これは、意地の悪い見方だろうか。)

さらに先を予想しておけばであるが……オリンピックと政治、国際情勢とは密接な関係がある。アジアにおいて、日露戦争に勝った「一等国・日本」が、オリンピックに参加するということ自体が、まさに政治的である。

無論、昭和15年(1940)年に開催予定であった「東京オリンピック」。さらには、その前の回の、ベルリンでのオリンピック。これなど、国際社会の情勢と密接不可分である。1964年の東京オリンピックも、アジアで初のオリンピックという政治性をおびている。(このことは、第一回でも描いていたことである。)

ただ、このようなオリンピックにまつわる政治的な側面というものを、ドラマの進行の勢いでふりはらって、とにかくスピードを持って描く、そして、そのような政治性を笑い飛ばしてしまうだけの「毒」をもった人物として、ビートたけし(古今亭志ん生)が起用された、このように見ることもできよう。

オリンピックと政治、ナショナリズム……こういったものをどのように描いてみせるか、また、志ん生がどれほどの「毒」となるのか、宮藤官九郎の脚本に期待して見ることにしよう。

追記 2019-01-15
この続きは、
やまもも書斎記 2019年1月15日
『いだてん』あれこれ「坊っちゃん」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/01/15/9025210