『羊をめぐる冒険』(上)村上春樹2019-05-09

2019-05-09 當山日出夫(とうやまひでお)

羊をめぐる冒険(上)

村上春樹.『羊をめぐる冒険』(上)(講談社文庫).講談社.2004 (講談社.1982)
http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000203632

『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』につづけて読んだ。

やまもも書斎記 2019年5月6日
『1973年のピンボール』村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/05/06/9068974

村上春樹を読んできている。デビュー作である『風の歌を聴け』から読んで見ると、その作品の雰囲気がここにもある。なんともいえない叙情性、そして、この世界が別の世界のネガであるような奇妙な瞬間、これら、村上春樹文学の特性とでもいうべきものが、この『羊をめぐる冒険』にも感じ取れる。

文庫本で上巻を読んだところで言えば、この作品あたりから、村上春樹流の何かしら奇妙な物語世界とでもいうべきものが始まるように感じられる。これは先の二作品『風の歌を聴け』『1973年のピンボール』にはなかった、新たな文学世界の展望である。

その新たな物語は、どうやら謎の羊をめぐるものであるらしい。北海道へと旅立つところで、上巻は終わっている。

この作品が書かれたのが、1982年。読んでいて、70年の政治の季節が終わった後の、何かしら妙な空白感と充足感の入り交じったような、時代の雰囲気を感じてしまう。二一世紀の今日からこの作品をふりかえってみれば、その時代というものを感じてしまうことは無理からぬことであるにはちがいない。

その時代、1970年代、80年代の雰囲気を感じさせながらも、読みながら、ふと物語の世界に入り込んでしまっていく。これこそ、文学の持つ普遍性というべきものであろう。二〇世紀の終わりの時代において、小説というのは、このようなものであったのか、ふとこんなことを思ったりもする。

続けて下巻を読むことにしよう。

追記 2019-05-10
この続きは、
やまもも書斎記 2019年5月10日
『羊をめぐる冒険』(下)村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/05/10/9070623

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