日本語学会(2019春、甲南大学)に行ってきた2019-05-23

2019-05-23 當山日出夫(とうやまひでお)

続きである。
やまもも書斎記 20019年5月23日
日本近代語研究会(2019春、関西大学)に行ってきた
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/05/20/9074746

2019年5月18日、19日と、日本語学会が甲南大学であったので行ってきた。

甲南大学は阪急で岡本で降りることになる。我が家からだと、近鉄で難波まで出て地下鉄で梅田まで、そこで阪急に乗り換える、ということになる。朝の10時ごろに家を出た。

ちょっと早めについた。阪急岡本のあたりは、閑静な住宅街である。大学の建物を探すのに、ちょっと迷ったりもしたが、ともかく行き着いた。

聞きたい発表が、C会場であったので、この日はずっと同じ会場の教室にいた。前半の発表は、主に方言、アクセントについてのもの。この分野については、とんと門外漢である。だが、自分の知らない分野のことについては、本や論文を読んだりするよりも、口頭発表を聞いている方が、なんとなく分かったような気になる。それに、最近の音韻、音声、アクセントなどの研究発表では、実際の音声データを会場で聞かせてくれるので、分かりやすい。

午後の後半の発表。「須磨」の景観文字についての発表。ここでは、私の書いた論文が先行研究としてつかっていてくれるので、聞いておきたかった。景観文字……バス停や駅名など、地名の看板、ポスター、石碑などに見られる、狭義の文献資料でないもの……をつかっての、漢字の字体研究ということでは、私は、以前に、京都の「祇園」について調べたことがある。それから、「葛」についても、これは情報処理学会の研究会で発表したものがある(京都の「葛野」の地名について)。

「祇」という字、それから、「葛」という字は、JIS規格の「0213:2004」で字体が変更になった字である。コンピュータの文字としては、WindowsXPとVista以降で文字が違ってくる。

それから、午後の最後の発表。上代特殊仮名遣いの母音の数について……先行研究ではどのように言われてきたか、これは興味深かった。そもそも母音の定義が研究者によって違う。そして、上代日本語の母音の数については、諸説ある。現代にいたるまで、定説というべきものが存在しないというのが現状かもしれない。

上代特殊仮名遣いは、橋本進吉によって発見(再発見)されたというのは、知られていることだろう。だが、橋本進吉がいったいどのように上代の音韻について考えていたかは、実は、現在にいたるまでよくわかっていないというのが本当のところのようだ。また、いわゆる八母音説に対して、いろいろと反論などあるが、それらの研究についても、子細に検討すると、いったい何を根拠にして、母音の数を論じているのか、はっきりしないらしい。

日本語史、国語史、国語学史の通説として一通りは知っていることであっても、よくその原典にあたって読んでみるならば、どのように研究されてきたのか、その研究史をめぐっては、さらに論ずべきところがあるといえる。

学生に日本語史を教えているのだが、今後の授業において、このようなことをどこまでどのように語ればいいのか、考える必要があると深く考えるところがあった。

終わって懇親会。学内の学食であったが、非常におしゃれな雰囲気の会場であった。人も多かった。いつもの顔ぶれもいれば、新しく加わった若い人もいるし、久しぶりにあった人もいる。

懇親会の終わったあと、二次会として、十人ほどでつれだって三宮まで行くことにした。この前の訓点語学会の懇親会の二次会の時は、私が一番若かったようだが、今回は、逆に、私が一番の年上だった。三宮に出て、とりあえず入れる居酒屋をさがして、しばらく歓談。

家が遠いので、9時半ごろには出た。一緒に奈良に帰る大学院生と一緒に店を出て、阪神に乗った。あいにく、近鉄への直通がなかったので、途中、二~三回乗り換えて、家に帰った。家についたら、11時をかなり回っていた。

翌日は、学会としてはシンポジウムなどがあったのだが、家の留守番をしなければならなかったので、家にいることにした。もう、三日連続の学会は、疲れるようになってきた。家で本(村上春樹)など読んですごした。

次回(秋)は、東北大学で開催である。