『完全版 若き日と文学と』辻邦生・北杜夫 ― 2019-08-09
2019-08-09 當山日出夫(とうやまひでお)
辻邦生・北杜夫.『完全版 若き日と文学と』(中公文庫).中央公論新社.2019
http://www.chuko.co.jp/bunko/2019/07/206752.html
中公文庫で新しい対談集が刊行になったので買って読んでみた。これは、以前に『若き日と文学と』のタイトルで出ていた対談集に、その他の、二人(辻邦生、北杜夫)の対談をあつめて、編集したものである。
読んで思うことなど書いてみる。二点ほどあげる。
第一には、文学を語るということについて、情熱的になれるこの二人の精神……文学精神とでもいっていいのかもしれない……である。読んでいって感じるのは、とにかく、文学について話をすることが楽しくてしかたがないという気持ちの現れである。
たぶん、これは、対談者のひとりである北杜夫が、躁状態のときの対談、ということも影響しているのかもしれない、などと思ったりはするのだが。そのようなことを思って読むとしても、読んでいきながら、文学について語るということは、こんなにも楽しい、こころときめくものなのか、そのこころの楽しさが伝わってくる。
第二には、対談者の二人の代表的な作品……『背教者ユリアヌス』、それから、『楡家の人びと』、この二つの作品について、恰好の読書ガイド、案内になっていることである。これらの作品については、私は、若い時に読んでいるし、近年になって再読している。
やまもも書斎記 2018年4月7日
『背教者ユリアヌス』(一)辻邦生
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/04/07/8820656
やまもも書斎記 2017年4月8日
『楡家の人びと』北杜夫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/04/08/8448584
なるほど、これらの作品について、作者はこのように思って書いているのか、いろいろ納得するところが多くあった。
以上の二つぐらいが、読んで感じるところである。
さらに書くとするならば、二人がもっとも影響をうけていることになる、トーマス・マンについて、多く教えられるところがあった。トーマス・マンについても、私も、近年になって再読したりしている。
やまもも書斎記 2017年5月25日
『魔の山』トーマス・マン
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/05/25/8574049
やまもも書斎記 2017年5月4日
『ブッデンブローク家の人びと』トーマス・マン
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/05/04/8523322
やまもも書斎記 2017年4月19日
『トニオ・クレエゲル』トオマス・マン(岩波文庫)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/04/19/8492205
それから、特にひとつの章をもうけて設定してある対談が、『星の王子さま』について。この本も、若いときに読んでいる。この作品は、近年になって、著作権保護期間が終了したこともあって、各種の新しい翻訳が刊行になっている。
『星の王子さま』について、その作者であるサン・テグジュペリについて、縦横に語っている。このような文章を読むと、再度、『星の王子さま』を読み返してみたくなった。また、新しい訳を読んでみたいとも思う。
ともあれ、この対談集は、文学について語ることによろこびがあるとするならば、そのよろこびに満ちた本であることは確かである。文学がすきなひとなら、読んで損はない本である。
なお、ついでに書いておくならば、私はこの本を読んで、無性に、『青春記』『航海記』を読み直してみたくなった。何十年ぶりになる。読後感などは、追って。
http://www.chuko.co.jp/bunko/2019/07/206752.html
中公文庫で新しい対談集が刊行になったので買って読んでみた。これは、以前に『若き日と文学と』のタイトルで出ていた対談集に、その他の、二人(辻邦生、北杜夫)の対談をあつめて、編集したものである。
読んで思うことなど書いてみる。二点ほどあげる。
第一には、文学を語るということについて、情熱的になれるこの二人の精神……文学精神とでもいっていいのかもしれない……である。読んでいって感じるのは、とにかく、文学について話をすることが楽しくてしかたがないという気持ちの現れである。
たぶん、これは、対談者のひとりである北杜夫が、躁状態のときの対談、ということも影響しているのかもしれない、などと思ったりはするのだが。そのようなことを思って読むとしても、読んでいきながら、文学について語るということは、こんなにも楽しい、こころときめくものなのか、そのこころの楽しさが伝わってくる。
第二には、対談者の二人の代表的な作品……『背教者ユリアヌス』、それから、『楡家の人びと』、この二つの作品について、恰好の読書ガイド、案内になっていることである。これらの作品については、私は、若い時に読んでいるし、近年になって再読している。
やまもも書斎記 2018年4月7日
『背教者ユリアヌス』(一)辻邦生
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2018/04/07/8820656
やまもも書斎記 2017年4月8日
『楡家の人びと』北杜夫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/04/08/8448584
なるほど、これらの作品について、作者はこのように思って書いているのか、いろいろ納得するところが多くあった。
以上の二つぐらいが、読んで感じるところである。
さらに書くとするならば、二人がもっとも影響をうけていることになる、トーマス・マンについて、多く教えられるところがあった。トーマス・マンについても、私も、近年になって再読したりしている。
やまもも書斎記 2017年5月25日
『魔の山』トーマス・マン
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/05/25/8574049
やまもも書斎記 2017年5月4日
『ブッデンブローク家の人びと』トーマス・マン
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/05/04/8523322
やまもも書斎記 2017年4月19日
『トニオ・クレエゲル』トオマス・マン(岩波文庫)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2017/04/19/8492205
それから、特にひとつの章をもうけて設定してある対談が、『星の王子さま』について。この本も、若いときに読んでいる。この作品は、近年になって、著作権保護期間が終了したこともあって、各種の新しい翻訳が刊行になっている。
『星の王子さま』について、その作者であるサン・テグジュペリについて、縦横に語っている。このような文章を読むと、再度、『星の王子さま』を読み返してみたくなった。また、新しい訳を読んでみたいとも思う。
ともあれ、この対談集は、文学について語ることによろこびがあるとするならば、そのよろこびに満ちた本であることは確かである。文学がすきなひとなら、読んで損はない本である。
なお、ついでに書いておくならば、私はこの本を読んで、無性に、『青春記』『航海記』を読み直してみたくなった。何十年ぶりになる。読後感などは、追って。
追記 2019-08-17
この続きは、
やまもも書斎記 2019年8月17日
『どくとるマンボウ青春記』北杜夫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/17/9141939
この続きは、
やまもも書斎記 2019年8月17日
『どくとるマンボウ青春記』北杜夫
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/17/9141939
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