『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』2019-08-29

2019-08-29 當山日出夫(とうやまひでお)

村上春樹、河合隼雄に会いにいく

河合隼雄.村上春樹.『村上春樹、河合隼雄に会いにいく』(新潮文庫).新潮社.1999 (岩波書店.1996)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100145/

この本は、『夜のくもざる』につづけて読んだ。

やまもも書斎記 2019年8月10日
『夜のくもざる』村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/10/9139334

村上春樹と河合隼雄の対談は、以前に読んでいる。

やまもも書斎記 2019年6月27日
『約束された場所で』村上春樹(その二)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/06/27/9092251

この本(対談)を読んで思うことは次の二点だろうか。

第一には、この対談が主に『ねじまき鳥クロニクル』の刊行の後でなされているので、この作品についての、作者自身の解説、あるいは、思い、というべきものを読みとることができる。日本の歴史というもの、あるいは、暴力というものを、『ねじまき鳥クロニクル』は描いているのだが、そのことについて、かなり踏み込んだ言及がある。これは、村上春樹研究にとって、貴重な証言になるにちがいない。

第二には、にもかかわらずであるが、小説家は、物語作者として、自分でも意図しないことを書いてしまうことがある……言い換えるならば、自分でも何故そのように書いたかわからないところがある、このことを語っていることである。いわゆるテクスト論の立場にたてば、作者の意図しないことを、作品から読みとることは自由だろう。

以上の二点が、この本を読んで思うことである。

私は、これまで河合隼雄のものは、さほど読んで来てはいない。この本を読んで、河合隼雄もきちんと読んでおかないといけないと感じた次第でもある。

村上春樹と河合隼雄の対談である。小説家が物語を書くことを、箱庭をつくることに、なぞらえて語っているところがある。このあたり、これからの文学研究において、どのように考えられていくことになるのだろうか、興味深く思って読んだ。

次は、『うさぎおいしーフランス人』である。

追記 2019-08-30
この続きは、
やまもも書斎記 2019年8月30日
『うさぎおいしーフランス人』村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/08/30/9147131