『象工場のハッピーエンド』村上春樹・安西水丸2019-09-13

2019-09-13 當山日出夫(とうやまひでお)

象工場のハッピーエンド

村上春樹(文).安西水丸(画).『象工場のハッピーエンド』(新潮文庫).新潮社.1986 (CBSソニー出版.1983)
https://www.shinchosha.co.jp/harukimurakami/books/100131.html


続きである。
やまもも書斎記 2019年9月12日
『ティファニーで朝食を』村上春樹訳
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/09/12/9152538

この本は、夏休みの終わり、ふと手にした本である。文章は村上春樹、絵は安西水丸である。

ああ、こういう本を書くひとだったのか、村上春樹は……という思いになる。

とにかく、読んでいてたのしい。重厚長大な長編、あるいは、ちょっと不可思議な印象のある短篇など、多彩な文章を書く作家であるが、この本に載っているような、軽妙な文章の書き手でもある。そして、この本は、絵が安西水丸であることと不可分である。もし、将来、「村上春樹全集」が出ることがあったとしても、この本、特にこの本にかぎらないかもしれないが、安西水丸とのコンビで作った本は、そのとおりに近い形で出してもらいたいものである。ここから、村上春樹の書いた文章だけを抜き出して編集しなおしたとしたら、つまらない本になってしまうだろう。

村上春樹にとって、この本に載っているような軽妙な文章は、文章を書くのが楽しくてしかたがない、という印象をうける。そして、このような文章は読んでいて、読者も楽しくなる。

おそらく、かつて、夏目漱石が俳句や漢詩の世界に遊んでいたと、通じるところがあるのだろうと思ってしまうが、どうであろうか。

村見春樹は、現代におけるすぐれたエッセイスト、というよりも、現代における俳諧師とでも言った方がいいかもしれない。私は、ここに収録の文章に、「俳味」とでもいうべきものを感じてしまう。

次は、『フラニーとズーイ』を読むことにする。

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