『うずまき猫のみつけかた』村上春樹2019-10-19

2019-10-19 當山日出夫(とうやまひでお)

うずまき猫のみつけかた

村上春樹.『村上朝日堂ジャーナル うずまき猫のみつけかた』(新潮文庫).新潮社.1999 (新潮社.1996)
https://www.shinchosha.co.jp/book/100146/

続きである。
やまもも書斎記 2019年10月12日
『結婚式のメンバー』カーソン・マッカラーズ/村上春樹(訳)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/10/12/9163890

収録のエッセイは、1994年から95年にかけて、『SINRA』という雑誌に掲載されたもの。それに、安西水丸の絵と、村上陽子の写真をつけて、さらに加筆などして、エッセイ集としたもの。本のタイトルに「村上朝日堂ジャーナル」とあるのは、安西水丸と一緒の仕事とでもいうことだろうかと思う。

アメリカのボストンの隣町、マサチューセッツ州ケンブリッジで住まいしていた時の執筆になる。エッセイ集としては、『やがて哀しき外国語』の続くものという位置づけである。

やまもも書斎記 2019年9月5日
『やがて哀しき外国語』村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/09/05/9149531

著者本人が書いているとおり(あとがき)、この本は、『やがて哀しき外国語』にくらべると、かなり気楽に楽しんで書いているという印象をうける。この本、村上春樹の外国滞在エッセイとして、十分に楽しんで読めばいいと感じる。

読んで印象にのこることがいくつかある。マラソンのこと、自動車のこと、ジャズのこと、それから、猫のこと。この本は、なぜか猫の話が多い。しかも、アメリカの猫のことのみならず、日本にいた時に飼っていた猫のことも書いてある。これを読むと、村上春樹という人は、猫が本当にすきなんだなあ、と感じる。

この本のなかで、というよりも元の連載のなかでといった方がいいかもしれないが、村上春樹は、ボストンでのマラソンを二回はしっている。

運動の苦手な私としては、四二キロもの距離を走ることなど、想像もできないのだが、このエッセイを読むと、そこには、非常に充実したものがあることが理解される。このあたりのことなど、村上春樹の文学と、走るということ、これは興味のあることである。これまでに読んだ他のエッセイにおいても、外国に行っても、村上春樹ははしっている。

さらにこの本全体の印象としては、絵(安西水丸)もいいが、写真もなかなかいい。文章と、絵と、写真と、全体としてまとまって、こぎれいな本にしあがっているという印象である。

とにかく、村上春樹のエッセイは、ちょっとした空き時間があったような時、何か気疲れするするような仕事の合間、ふと手にして読むのにちょうどいい。この本も、何回かにわけて読んだことになるのだが、読んでいて楽しくなる。短い文章ながら、村上春樹の世界のなかにじんわりとひたっていく感じがする。

さて、次は、レイモンド・カーヴァーの翻訳小説ということにする。

追記 2019-10-22
この続きは、
やまもも書斎記 2019年10月22日
『レイモンド・カーヴァー傑作選』村上春樹訳
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/10/22/9167501

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