NHK『怪談牡丹燈籠』巻の四「復讐」2019-10-31

2019-10-31 當山日出夫(とうやまひでお)

NHK プレミアムドラマ 令和元年版 怪談牡丹燈籠 Beauty&Fear
https://www4.nhk.or.jp/P5858/

続きである。
やまもも書斎記 2019年10月24日
NHK『怪談牡丹燈籠』巻の参「因縁」
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2019/10/24/9168365

「因果応報」の物語が最終段階をむかえる。

第一は、金をもって江戸から逃げた、伴蔵とお峰の二人。江戸から離れた宿場町で商売をはじめる。それもうまくいっていたようだが、結局のところは、自分自身で身をほろぼしてしまうことになる。ここにうまくからんできているのが、同じく江戸から逃げたお国、それから、医者の志丈。この志丈もまた、善人ということではなかった。また、この二人も、志丈も、お露の呪縛から逃れることはできなかった。

第二は、江戸から逃げたお国と源次郎。それをかたきとして追う孝助。ここで、因果がめぐりめぐって、最終的な決闘となる。そして、無事に孝助は本懐を遂げる。お国と源次郎は死ぬことになる。ある意味では、このような最後は、このドラマの最初から予見できていたことでもある。

以上、二つの「因果応報」の物語が展開する、完全な「勧善懲悪」のストーリーの展開なのだが、最後のところで、お国が孝助に言った台詞がいい……いわく、自分の気持ちはおまえなどにはわかりはしない、と。この最後のお国の台詞が、現代版の『牡丹燈籠』の現代版たるゆえんであろう。

このドラマ、明治の『牡丹燈籠』の筋をかりて、現代の「悪女」の物語を展開してみせた。そして、その「悪女」……お国……を、尾野真千子が、見事に演じていたと思う。不幸に生まれ、育った、不運な「悪女」であるお国。その心中こそが、このドラマの核心だと思う。それにしても、「悪女」はどうして、美しいのだろうか。そして思うが、幽霊となったお露もまた「悪女」なのかもしれない。

ところで、私は、このドラマを見て、ふと黒澤明の映画を思ってしまったのだが、どうだろうか。場面の展開とか、カメラワークとか、なんとなく黒澤映画を思わせるところがある。

さて、四回のこのドラマが終わったことだし、買っておいた『牡丹燈籠』(三遊亭円朝、岩波文庫)を読むことにしたい。