NHK『ストレンジャー~上海の芥川龍之介~』 ― 2020-01-03
2020-01-03 當山日出夫(とうやまひでお)
NHK 『ストレンジャー~上海の芥川龍之介~』
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/412648.html
昨年末の放送であったものを録画しておいて、正月になってから見た。
見て思ったことを書けば次の二点。
第一に、映像の美しさ。
このドラマ、4K、8Kでも放送することになっている。NHKの映像の美しさを見せたかったのだろう。この観点からは、確かに成功している。映像的な美しさという点では、抜きん出たものがあったといっていいだろう。一〇〇年前の上海の街の映像化ということでは、実に見事であったといえる。
第二に、政治的な配慮。
映像的には美しいのだが、では、このドラマで何を語りたかったのか、そこのところが今ひとつはっきりしなかった。強いていえば、芥川龍之介を題材にして、今からおよそ一〇〇年前の上海を映像化してみせた、それ以上のものを感じるところがなかった。
たぶん、このドラマをつくったことでNHKが失ってしまったものがある。中国側の全面的な協力がなければ、作れない。このドラマを見ながら、どうしても、今の香港のことが頭のなかにあった。NHKは、これから香港の情勢をどう伝えていくことになるのだろうか。
あえていうならば、こうも考えることができようか。あの混迷した中国において、革命をなしとげることができたのなら、これから先の将来、新たな未来……それは民主化といっていいだろう……これを、なしとげることもできるにちがいない。このようなメッセージを、なんとなく感じとってしまうことになった。(ドラマの制作者がそこまで意図していたかどうかはわからないが。)
以上の二点が、見ながら思ったことである。
制作の意図として、日本の中国侵略を描くということもあったのだろう。例えば、日本製の鉛筆を使わないといったようなところ。
だが、これも、芥川龍之介という視点から描くとなると、微妙なところがある。このドラマの時代の数年後、昭和二年に芥川龍之介は自殺している。結局、芥川の視点では、戦争の時代……満州事変以降の本格的な日中戦争……を見ることもないし、また、その後の新しい中国の姿を見ることもなかった。つまりは、芥川龍之介という視点を設定することによって、その後の歴史を封印してしまったかのごとくである。この意味では、中国との共同制作というようなドラマにおいて、絶妙な設定であったのかもしれない。
2020年1月2日記
NHK 『ストレンジャー~上海の芥川龍之介~』
https://www.nhk.or.jp/dramatopics-blog/20000/412648.html
昨年末の放送であったものを録画しておいて、正月になってから見た。
見て思ったことを書けば次の二点。
第一に、映像の美しさ。
このドラマ、4K、8Kでも放送することになっている。NHKの映像の美しさを見せたかったのだろう。この観点からは、確かに成功している。映像的な美しさという点では、抜きん出たものがあったといっていいだろう。一〇〇年前の上海の街の映像化ということでは、実に見事であったといえる。
第二に、政治的な配慮。
映像的には美しいのだが、では、このドラマで何を語りたかったのか、そこのところが今ひとつはっきりしなかった。強いていえば、芥川龍之介を題材にして、今からおよそ一〇〇年前の上海を映像化してみせた、それ以上のものを感じるところがなかった。
たぶん、このドラマをつくったことでNHKが失ってしまったものがある。中国側の全面的な協力がなければ、作れない。このドラマを見ながら、どうしても、今の香港のことが頭のなかにあった。NHKは、これから香港の情勢をどう伝えていくことになるのだろうか。
あえていうならば、こうも考えることができようか。あの混迷した中国において、革命をなしとげることができたのなら、これから先の将来、新たな未来……それは民主化といっていいだろう……これを、なしとげることもできるにちがいない。このようなメッセージを、なんとなく感じとってしまうことになった。(ドラマの制作者がそこまで意図していたかどうかはわからないが。)
以上の二点が、見ながら思ったことである。
制作の意図として、日本の中国侵略を描くということもあったのだろう。例えば、日本製の鉛筆を使わないといったようなところ。
だが、これも、芥川龍之介という視点から描くとなると、微妙なところがある。このドラマの時代の数年後、昭和二年に芥川龍之介は自殺している。結局、芥川の視点では、戦争の時代……満州事変以降の本格的な日中戦争……を見ることもないし、また、その後の新しい中国の姿を見ることもなかった。つまりは、芥川龍之介という視点を設定することによって、その後の歴史を封印してしまったかのごとくである。この意味では、中国との共同制作というようなドラマにおいて、絶妙な設定であったのかもしれない。
2020年1月2日記
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