『運命のコイン』(下)ジェフリー・アーチャー2020-02-29

2020-02-29 當山日出夫(とうやまひでお)

運命のコイン(下)

ジェフリー・アーチャー.戸田裕之(訳).『運命のコイン』(下)(新潮文庫).新潮社.2019
https://www.shinchosha.co.jp/book/216149/

続きである。
やまもも書斎記 2020年2月28日
『運命のコイン』(上)ジェフリー・アーチャー
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/02/28/9218651

下巻まで読み進めてきて、やはり面白いと感じる。この小説の骨格をなす大きな筋立ては別においておくとしても、イギリスにおいても、アメリカにおいても、波瀾万丈の物語が展開する。そして、その国における、人びとの生活、学生生活、政治、ベトナム戦争、ビジネス、恋愛、裏切り……もろもろの要素がからまりあって、最終にいたる。

ふむ、このような筋立ての小説として、このような結論は、ある意味で妥当なところかなと思うのだが、それにいたるまでの大胆な物語の展開が魅力的である。

それにしても、この作品、東西冷戦の時代から、ベルリンの壁の崩壊、ソ連の解体、そして、ロシアの時代の復活……この一連の世界の大きな流れをきちんと踏まえたものになっている。そして、イギリス、アメリカ、ソ連、ロシアにおける、社会と国家のこの間の歴史的変遷を的確に描いている。まさに、東西冷戦が終わって、二一世紀の今日になってからの時代だからこそ、書くことのできた小説であるともいえるだろうか。

さて、クリフトン年代記は、それぞれ文庫本が出た時に買って持っているのだが、まだ読んでいない。家のなかにあるのを探してきて、読むことにしようかと思う。

ともあれ、ジェフリー・アーチャーは、現代において、エンタテイメントとしての小説の抜群の書き手であると思う。

2020年2月23日記