『ラオスにいったい何があるというんですか?』村上春樹2020-04-23

2020-04-23 當山日出夫(とうやまひでお)

ラオスにいったい何があるというんですか

村上春樹.『ラオスにいった何があるというんですか?』(文春文庫).文藝春秋.2018
https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784167910563

続きである。
2020年3月20日
『雨天炎天』村上春樹
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/03/20/9226037

村上春樹の紀行文集である。収録してあるのは、次の文章。

チャールズ河畔の小径 ボストン1
綠の苔と温泉のあるところ アイスランド
おいしいものが食べたい オレゴン州ポートランド メイン州ポートランド
懐かしいふたつの島で ミコノス島 スペッツェス島
もしタイムマシーンがあったなら ニューヨークのジャズ・クラブ
シベリウスとカウリスマキを訪ねて フィンランド
大いなるメコン河の畔で ルアンプラバン(ラオス)
野球と鯨とドーナッツ ボストン2
白い道と赤いワイン トスカナ(イタリア)
漱石からモンまで 熊本県(日本)1
「東京するめクラブ」より、熊本再訪のご挨拶 熊本県(日本)2

ここ二〇年ぐらいの間に書かれた、いろんなところに行ったときの紀行文を編集したものである。

これを読んで思うことは、村上春樹という人は、実によく旅に出る人であるということ。そして、その行った先で、実に旅をたのしんでいる。

この本、他の本を読む合間に、一章づつ読むように読んでいったので、特に全体として印象に残ることがなく終わってしまった。だが、読みながら、ふと村上春樹の文学的想像力の世界に入り込んでしまうように感じるところがあった。

それから、この本に限らずいえることだが……村上春樹は、食べ物についての記述がうまい。そんなに高価なもの、珍味を食するということはない。旅に出て、そこにある普通の食堂やレストランで食事をしている。その描写が、実にいい。さりげなく、しかし、本当に食べることが好きでおいしいものを食べているという感じがつたわってくる。

また、日本においては熊本をたずねている。地震のある前と、あった後である。このような文章を読むと、村上春樹のもつ文学的想像力の世界をつよく感じる。地震の被害にもかかわらずそこに生きている熊本の人びとに共感するイメージがつたわってくる。文学者ならでは紀行文であると感じるところあった。

これは気楽に読むことのできる、村上春樹の紀行文集であると思う。

2020年3月13日記

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