オンライン授業あれこれ(その二)2020-05-02

2020-05-02 當山日出夫(とうやまひでお)

続きである。
やまもも書斎記 2020年4月24日
オンライン授業あれこれ(その一)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/04/24/9238660

今のところ、五月いっぱいは通常の教室での授業は中止ということになっている。その後、どうなるかわわからないが……たぶん、前期の間は再開は無理だろうと思っている。ニュースなどでは、今月(五月)の間は、緊急事態宣言はつづくらしい。それも状況によってはさらなる延長の可能性もある。

もし、何事もなければ、今年の予定では、カレンダーどおりに連休のはずであった。が、それも、前提が崩れてしまっている。いろいろ考えて、連休の間も教材を配信することにした。

その理由としては、

第一に、オンラインでの教材の配信であれば、学生が、物理的に時間や場所を拘束されることがない。自分の好きな時間に、インターネットからダウンロードできる。祝日だから休みにするということの意味がない。

第二に、今年度の初めの段階で、二回を休んでいる。情勢をみきわめる時間が必用であったし、学生の科目の履修登録が終了するのを待っていたということもある。この最初の休みになった分をおぎなう意味もあって、連休中も教材配信にした。そうすると、前期のうちに、ほぼ最初の予定どおり一五回をこなすことが可能になる。

以上のことを考えて、連休中ではあるが、教材の配信をしてある。

ただ、学生は、あまり大学のHPを見てはくれていないようである。今のところ、アクセス数は半分ほどであろうか。

だが、オンラインになったからといって、学生の全員がついてくると思うべきではないのかもしれない。通常の授業があるときでも、出席は、ほぼ半数程度である。出席は毎回確認している。少人数のゼミのような形態ならば、時間を決めて、リアルタイム双方向通信のシステム(ZOOMなど)をつかっての授業ということも考えるべきであろう。しかし、一〇〇人以上の学生を相手の概論的な講義である。無理に、学生を拘束することもないかと思っている。

おそらく、授業の種類によって、いろんな形態があっていい。卒論のゼミとか、あるいは、新入生の入門的な授業については、時間を決めて、リアルタイム双方向通信で行う必用があるだろう。しかし、すべての授業がそうであることもないと思う。

教材のオンライン配信という方式をとるということは、ある意味で、時間割を決めて、何曜日の何時間目、という制約が無くなることでもある。この制約の無くなることを、むしろ前向きにとらえて考えるべきかと思っている。これまでの学校のシステム、つまり、決められた時間に決められた場所(教室)に集まって、教師の話を聞くという形式が、自明のものではなくなってきているのである。

これは、今まで、このような既存のシステムではついてくることの難しかった学生が、逆に、学習しやすくなるという可能性がある。一方で、時間割があって決まっているからとにかく学校に出てきたという学生が、脱落していく可能性もある。これも、総合的に考えてみるならば、最終的には全体としてそう変わらないということになるのかもしれない。

授業の形態は変わる。教室での話しから、教材配信と課題提出ということになる。だが、そうはいっても、授業の目標、何を教えたいか、ということについては、いわゆる教育のレベルの保証が必用である。そのために、配信の教材は、なるべく丁寧に、しかし、読むのが負担にならないように、簡潔に分かりやすく書くことを、心がけることになる。これはこれで、教室で話しをするのとは、別の苦労と工夫が必用になることになる。

それから……リアルタイム双方向通信(ZOOMなど)では、スマホしか持っていない学生、自分のパソコンを持っていない学生を、見放すことになりかねない。ここは、より多くの学生が、より公平に、アクセス可能な方式を選ぶという選択もあっていいかと思う。

また考慮すべきこととして、学生の生活もある。経済活動が停滞してアルバイトもままならないであろう。そこに、既定の方針どおり時間割に従って時間を拘束することが適切かどうか……まあ、たしかに学生の本分は学業にあるといえばそれまでだが……しかし、現実の学生の生活のことも考えてやる必用があるとも、私は思う。

本来ならば、授業形態の変更に合わせてシラバスも書きかえ、内容も根本的に考える余裕、少なくとも一年ぐらいの余裕があってしかるべきところである。無論、学生はそのための準備(パソコンやインターネットへの接続など)も必要になってくる。だが、そうも言っていられない。走りながら考えるしかない。

幸い、昨年までの授業のプリントの蓄積がある。それに解説の文章を付け加えて説明するということでやってみようと思っている。そして、既存の「学校」というシステムとは何であったか、自分なりに考えることにしてみたい。

2020年5月1日記

追記 2020-05-09
この続きは、
やまもも書斎記 2020年5月9日
オンライン授業あれこれ(その三)
http://yamamomo.asablo.jp/blog/2020/05/09/9244587

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